2020 Fiscal Year Research-status Report
Biopolitics and Social Philosophy in the Times of Anthropocene: Critical Intervention in Climate Justice
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19K00050
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
箱田 徹 天理大学, 人間学部, 准教授 (40570156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気候変動 / 採取主義 / 環境 / 人新世 / 生政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる関心である生政治概念の批判的摂取と現代的応用について、採取(extraction)や採取主義(extractivism)という概念に注目した理論的な取り組みが近年、批判的な社会理論のなかで大きな広がりを見せている。採取-採掘は、天然資源や一次産品の大規模な収奪とそれに伴う自然環境や地域社会の破壊をもたらすだけでなく、金融とロジスティクスという高度に情報化・金融化された今日の資本主義のあり方を捉えるうえでのキータームとなっているのである。 日本ではほとんど紹介されてこなかったこの潮流を、人文地理学者である北川眞也と原口剛の両氏とともに『思想』(2021年2月号)で翻訳・紹介する企画を実現させたことが、本年度の最大の成果である。前回の科研費で招聘したサンドロ・メッザードラ氏の論考を翻訳・紹介するなどして、これまでの研究との関連性をつけつつ、問題意識を掘り下げる取り組みができた。人新世論とのかかわりでは、最新刊「Brutalisme」でも気候変動と採取主義との関係を踏まえながら独自の論を展開するアフリカを代表する思想家アシユ・ムベンベのCovid-19パンデミック論を翻訳・紹介した。ジョルジョ・アガンベンはパンデミック下での現代社会のコントロールのあり方を鋭く分析し物議を醸した。この議論を踏まえつつ、気候変動やフーコー戦争論の観点から社会の現状を批判的に分析する論考も執筆した。このほか気候変動や人新世論とも深いつながりをもつ論者の書籍を3点翻訳刊行すべく準備を進めており、2021年度には刊行する見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19パンデミックにより海外渡航を伴った現地調査がまったくできない状態が続いており、当初構想してた研究計画は大幅な見直しを余儀なくされている。一方で、採取主義にかんする研究が予想以上の進展を見せている。
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Strategy for Future Research Activity |
国外調査が実施できない状況が当面続くと予想されるため、研究計画を予定通り実施できる見通しがまったく立っていない。このため、国内にいても実施可能な資料・文献の収集と読解、執筆と翻訳をとおして、20年度に大きく取り上げることのできた「採取主義」についての論点を深めていくことで、計画の修正とリカバリーを図りたい。またこの取り組みを通じて、今後の国際的で学際的な共同研究の枠組みを立ち上げることを模索したい。
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Causes of Carryover |
Covid-19パンデミックに伴い予定されていた海外調査が実行できなかった。国内文献調査及び(可能であれば)海外調査の実施により費消する。
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