2022 Fiscal Year Research-status Report
Biopolitics and Social Philosophy in the Times of Anthropocene: Critical Intervention in Climate Justice
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19K00050
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
箱田 徹 天理大学, 人間学部, 准教授 (40570156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 思想史 / 気候変動 / 現代思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本務校の特別研究員制度を利用して2022年度を通してベルリンに滞在し、本研究課題にかかる調査研究を行った。文献調査の他、関連する活動家や研究者への面会や運動現場への訪問も行った。こうしたなかで次の知見を得た。1)運動側の関心は「暴力」か「非暴力」かではなく、実力闘争の質にあること。気候運動におけるラディカル派と穏健派は、戦術や手法の違いが強調されがちだが、気候変動の抑制という共通目標を実現する上で、両者の連携こそが主要な関心事である。2)研究者の関心は、運動における「暴力の是非」ではなく、非暴力実力闘争が民主主義社会における意志決定プロセスに与えるインパクトに向けられている。3)また両者を通じて、資本主義、脱植民地主義、入植者植民地主義、人種主義、コモン、採取主義、インターセクショナリティ、アボリショニズム、フェミニズム、クィアネス、ディサビリティといった近年の社会運動と批判的な社会理論における主要な関心事への言及が強く意識されている。4)そのうえで運動と理論の課題は、国や地域というローカルな文脈に3で挙げたような理論上の大きなトピックを落とし込むこと、また個別課題への動員闘争を超えたところで気候運動の争点を作りだしていくこと、そしてとりわけ研究の側からは理論的な知見と現場との往還的な関係を強化していくことにある。以上の知見と本研究課題の基本的な問題関心を踏まえた上で、研究代表者はこれまで取り組んできたミシェル・フーコーの統治論にかんする研究を改めて整理し、著作として刊行した。また、グローバルサウスや先住民居住地域を中心に、化石燃料やレアメタルの採取に伴う大規模で不可逆的な環境破壊への関心が高まるなか、ヨーロッパの気候運動も採取主義や入植者植民地主義への批判を強く意識している。こうした文脈のなか、人種主義や暴力をめぐる理論研究への意義を確認し、今後の研究の足がかりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
知見をまとめて成果にするまでに時間が掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた知見を整理し、文献研究を進めることで論文や報告のかたちで成果を発信する。
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Causes of Carryover |
本務校の特別研究員制度を利用できたため海外渡航費が不要になった。次年度使用額は研究成果をまとめるための資料費等に充当する。
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