2019 Fiscal Year Research-status Report
ツォンカパのルーイーパーダ流解釈と実践に関する包括的研究
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19K00053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桜井 宗信 東北大学, 文学研究科, 教授 (30292171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チベット密教 / チャクラサンヴァラ / ツォンカパ / 密教儀礼 / ルーイーパーダ流 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象資料であるツォンカパの著した〈ルーイーパーダ流〉関連文献のうち,先ず同流の基本典籍である『チャクラサンヴァラ現観』の組織に則って纏められている「チャクラサンヴァラ成就法」bDe chen gsal ba(Toh蔵外5323)を取り上げて,bKra shis lhun po版,sKu 'bum版,北京版,Shol版の4版を蒐集・対照し,その科文に沿った見出を付した校訂テクストを整定し,電子ファイル化した。 本書は,ツォンカパが,生起・究竟両次第や施食など同流の伝える基本的諸儀礼の実修方法を,彼が依拠した解釈根拠等の重要な情報も含めながら端的に述べているものであり,同じく課題文献資料である『チャクラサンヴァラ現観』の詳細な註釈書 'Dod pa 'jo ba(Toh蔵外5320)や究竟次第の解説であるdNgos grub kyi snye ma(Toh蔵外5325)の考究の基盤ともなるものである。 加えてタターガタヴァジュラの著した『チャクラサンヴァラ現観』の複註(Toh 1510)に関する短編の註釈書dPal mNgon par rtogs pa'i 'grel pa Khyad par gsal byed las zur du byung ba(Toh蔵外5321)の校訂テクストを整定,読解した。本書もツォンカパの著作ではあるが,“複註の解説”という性格上当初研究対象に含めていなかった。しかし上述の考究過程でツォンカパが同書を重用していることが判明したため,新たに研究を進めたものである。 更にツォンカパが相伝した〈ルーイーパーダ流〉系譜の一つであり,彼の理解形成に多大な影響を与えた〈サキャ派〉の〈ルーイーパーダ流〉解釈を明らかにするべく,〈サキャ派五祖〉に含まれるタクパギェンツェンとサパンの著作の読解・考察を進め,成果の一部を2本の論文に纏めて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定より少し遅れるに到ったのは,上記【研究実績の概要】で述べた“研究計画作成時に予定していなかった文献(Toh 蔵外5321)の考察を新たに加えたこと”に起因するものである。 これはツォンカパの〈ルーイーパーダ流〉理解の基盤を探る上で重要な意味を有する手続きであることから,進捗遅延の惹起以上に実施の意義が有ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い,本年度は前年度に整定したbDe chen gsal baのテクストの翻訳・註記を行うと共に,その成果に基づき'Dod pa 'jo baの校訂テクスト整定及び訳註に進む。 同書は,サンヴァラ諸聖典やそれに奉ずる諸流儀を論ずる「サンヴァラ概論」とも言うべき前半部と,『チャクラサンヴァラ現観』とそれの扱う儀礼を逐語的に解説している後半部とに大きく二分されるので,先ずはbDe chen gsal baと同性格の後半部を扱い,ツォンカパが構築した〈ルーイーパーダ流〉儀礼体系の一層の明確化を目指す。 併せて今年度に引き続きタクパギェンツェンによる著作の考察をも行い,ツォンカパの背景を形作っている〈サキャ派〉の〈ルーイーパーダ流〉伝承に関する理解を深める。
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