2020 Fiscal Year Research-status Report

ツォンカパのルーイーパーダ流解釈と実践に関する包括的研究

Research Project

Project/Area Number	19K00053
Research Institution	Tohoku University
Principal Investigator	桜井宗信東北大学, 文学研究科, 教授 (30292171)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2024-03-31
Keywords	チベット密教 / チャクラサンヴァラ / ツォンカパ / 密教儀礼 / ルーイーパーダ流
Outline of Annual Research Achievements	前年度一通り校訂テクストを整定したbDe chen gsal baに関して，新たにsDe dge dgon chen 版を入手し得たので異読の確認を進めて追記した。また同書の概略及び基本性格を纏め，その成果を11月オンラインで開催された「日本密教学会」第53回学術大会において「ツォンカパによる「チャクラサンヴァラ成就法－bDe chen gsal baを中心に－」と題して発表し，併せて『密教学研究』第53号に寄稿した。更に『チャクラサンヴァラ現観』の註釈でありながら前書の註釈的な性格をも併せ持つ'Dod pa 'jo ba（Toh蔵外5320）の読解を進め，そのテクストの整定と共にbDe chen gsal baの和訳稿に対する註記の典拠として活用した。一方ツォンカパのルーイーパーダ流〈究竟次第〉に関する考究を進める一歩として，彼が同次第の実修マニュアルとして著したrNal 'byor chen po'i 'khrid kyi rim pa mdor bsdus pa（Toh蔵外5340）の校訂テクストの整定作業に着手した。また前年度に引き続きタクパギェンツェンによる著作bDe mchog Lu hi pa'i lugs kyi mngon par rtogs pa bsgom pa'i rim paの訳註を行って，ツォンカパのルーイーパーダ流理解の背景を形作っているサキャ派における同流伝承の明確化を図り，その成果を『東北大学文学研究科』第70号に寄稿した。なお同書の校訂テクスト・訳註の提示はこれで完結となった。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い，所属大学においても図書館の閉鎖が行われ予定していた「ツォンカパ全書」の閲覧が行えなくなったこと，及び病気療養による。
Strategy for Future Research Activity	体調は徐々に回復しており，また所属大学図書館もほぼ通常の利用が出来る状態に戻ったため，今年度着手したrNal 'byor chen po'i 'khrid kyi rim pa mdor bsdus pa（Toh蔵外5340）の校訂テクストの整定作業を引き続き行うが，今まで未入手であったBla brang版を新たに参照資料に加えてテクストの精度の更なる向上を図る。それが完成し次第訳読に進むが，その際に同じくツォンカパが〈究竟次第〉の解説書として著したdNgos grub kyi snye ma（Toh蔵外5325）を参照資料として用いるので，同書の校訂テクスト整定作業を並行して進める。一方で〈生起次第〉の実修マニュアルであるbDe chen gsal baについてもBla brang版の読みを加えることで更にテクストの信頼度を高めると共に，整定したテクストの一部，及びそれに対応する訳註（'Dod pa 'jo baを参照しながら行っている）を『東北大学文学研究科研究年報』に寄稿する。