2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Acceptance and the changes of Indian Religion in Balinese Hindu Rituals
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19K00064
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山口 しのぶ 東洋大学, 文学部, 教授 (70319226)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バリ島 / バリ・ヒンドゥー教 / 通過儀礼 / バユ・オトン / シヴァ=ブッダ / Bali Hinduism |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、バリ・ヒンドゥー教の儀礼を取り上げ、その構造と特色を考察することにより、インドを起源とするヒンドゥー教および仏教がバリ島においてどのように受容され、変容したかを明らかにすることを目的とする。本研究の初年度となる2019年4月~7月においては、バリ・ヒンドゥー教およびヒンドゥー儀礼の著書、論文を中心に文献収集および講読を行った。また儀礼行為に関しては、2017年度の東洋大学海外特別研究制度によるバリ島における研究において収集したバリ・ヒンドゥー教の通過儀礼「バユ・オトン」の写真、動画資料などを整理、内容分析する作業を進めた。 以上の準備を行った上、2019年8月8日~18日には、バリ島に出張した。現地では、①バリ・ヒンドゥー寺院や博物館におけるヒンドゥー図像の写真撮影、②現地研究者(デンパサール・ヒンドゥー大学 I Ketut Donder氏)、現地ヒンドゥー組織関係者(I Gde Sudibya氏)への聞き取り調査、③バリ・ヒンドゥー教の通過儀礼の映像資料収集を行った。さらにTriatma Mulya University Bali Indonesia主催のTriatma Mulya International Conferenceにて基調講演 ‘Balinese Culture and Tourism -Focusing on Balinese Religious Culture’を行い、バリ島におけるヒンドゥー文化の特色と現代的価値について講演した。帰国後9月からは、今回の出張で入手した資料を整理するとともに論文を執筆し「バリ・ヒンドゥー教のバユ・オトン儀礼について」を出版した(『東洋思想文化』第7号、pp.65-86、2020年3月15日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の資料として最も重要なもののうちの一つであるバリ・ヒンドゥー教の儀礼の現地調査資料に関しては、すでに2017年度の1年間の海外特別研究中において基本的な儀礼の映像資料を収集済みであり、2019年8月のバリ島への出張前に比較的充分な資料整理や疑問点の確認などができたので、出張時の聞き取り調査もスムーズに運んだと思われる。現地の聞き取り調査では、バリ・ヒンドゥー教の儀礼の構造のみならず、バリ・ヒンドゥー教の歴史におけるヴィシュヌ信仰とシヴァ信仰のジャワからの伝来のプロセスに関して情報を得ることができ、その結果今後の研究課題も明らかとなった。また2019年度の研究成果としては、関連の論文執筆や招待講演も行い、少なくとも2019年度に関しては、おおむね順調に進展したと考えられる。 しかしながら、2020年2~3月頃より新型コロナウイルスが世界的に流行している。日本でも緊急事態宣言が出され、外出自粛により学会等の開催も中止となっている。またインドネシアも新型ウイルス流行の例にもれず、バリ島でもヒンドゥー教の行事がキャンセルされ、外出規制も行われている状況である。本研究においては、当初2020年度も8月に現地調査の目的でバリ島への出張を計画していた。しかしながら、現況ではその時期にバリ島に出張することは困難となる可能性が高いと感じている。そのような状況から、2020年度の研究は現地インフォーマントに直接聞き取り調査をする機会が少なくななり、現在研究代表者が入手済みの資料を用いる割合が大きくなると判断する。儀礼構造の分析については、儀礼で使用されるサンスクリット・テキスト分析の比重も高くなると考える。またそれ以外には、バリ・ヒンドゥー教の歴史的背景等に関し文献資料に基づいて考察を進めていく必要もあると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進に関してであるが、2020年度とそれ以降に分けて述べる。2020年度は、新型コロナウイルス終息の見通しが立たない現在、少なくとも8月~9月にかけてのバリ出張の可能性はほとんどないと判断する。そこで儀礼の聞き取り調査に関しては、インフォーマントへのEメールやビデオ通話によるものを中心とする。インターネット等に不慣れな年長のインフォーマントに対しては、インターネット環境に強い現地の知人を介して聞き取りを行う所存である。また2020年度は文献資料に基づき、インドからバリ島へ、またジャワ島からバリ島へのヒンドゥー教、仏教の伝播に関する歴史的な背景について考察を行いたい。さらに本研究の研究の柱の一つに「バリ・ヒンドゥー儀礼で実際に使用されるサンスクリット儀軌の内容分析」があるが、サンスクリット・テキストはすでに入手済みであり、2020年度はこのテキストの内容分析、テキスト成立の背景(特にジャワやインドのシヴァ派テキストとの関連)についての考察に重点を置いて研究を進める。同時に今一つの研究の柱「シヴァ=ブッダ」観念のバリへの伝播についても考察したい。 次に2021年度以降の研究推進方策である。以上のように2020年度は海外調査の可能性が疑わしいことから、2021年度に当初1回であったバリ島での調査研究を2回行いたい。2020年度に整理し明らかにした課題については、現地で充分な時間をとって聞き取り調査を行いたい。また現在バリのバンリ県で行われたバリ・ヒンドゥーの通過儀礼「バユ・オトン」について構造分析を進めているが、現地調査においては他地区のバユ・オトン儀礼やその他の通過儀礼についても映像資料収集を行い、対象を拡大して分析していきたい。2022年度は最終年度であるが、調査研究対象の儀礼について最終的な聞き取り調査を行い、最終的には研究成果報告書を作成する予定である。
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Causes of Carryover |
当初現地調査におけるインフォーマント謝金を予定していたが、インフォーマントが大学関係者であったことにより謝金は発生しなかった。また旅費に関して国内出張を2回予定していたが、本務校の業務の都合で1回のみにとどまった。以上のことより次年度使用額が生じた。 次年度使用額に関しては、関連図書、映像編集ソフト等の購入に充当する予定である。
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