2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Acceptance and the changes of Indian Religion in Balinese Hindu Rituals
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19K00064
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山口 しのぶ 東洋大学, 文学部, 教授 (70319226)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バリ・ヒンドゥー教 / Wedaparikrama / ヴェーダ・パリクラマ / Vedaparikrama / 聖水 / ヒンドゥー儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドネシア、バリ島に残るヒンドゥー教儀礼に関し、特にインドのヒンドゥー教・仏教のバリ島における受容と変容を中心に、その特色を明らかにすることを目的としている。2021年度当初はインドネシア、バリ島に出張し、儀礼構造や行為の意味について聞き取り調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染状況が改善しないため、出張は中止し、文献研究を中心に行った。 2020年度よりバリ・ヒンドゥー儀礼において聖水を作り出すためのサンスクリット儀軌Vedaparikramaの記述を分析していたが、2021年度も本儀軌の分析を継続し、本儀軌の構造とそこにあらわれるタントリックな要素の解明を進めた。 本儀軌は、すでに報告者のこれまでの研究により、儀礼の内化を含んだものであることが明らかになっているが、2021年度は儀礼の内化を述べる「シヴィー・カラナ」(Sivikarana、「僧の身体をシヴァ神の身体にすること」の意)の次第を中心に、本儀軌の特色について考察した。本儀軌においては、浄化の行為の後、聖水の準備がなされ、その後シヴィー・カラナの行為が続く。そこでは僧は瞑想により自身の身体からアートマンを外部に送り出し、身体の穢れを内的な火で焼き払う。その後シヴァ神のほら貝から流れ出すシヴァ神のエッセンスとも言うべき甘露を僧の体内に入れ、シヴァ神との一体化をはかる行為が述べられる。さらに僧は自身の心臓の八葉蓮華に母音字、子音字、シヴァの種子などをヤントラもしくはマンダラ状に布置し、心臓の蓮華をシヴァ神のアートマンが坐すに相応しい神的なものとする。このような種子の布置はタントリックな要素を多分に含んでいる。 本儀軌はインドからジャワを経てバリに伝播したヒンドゥー教シヴァ派の流れを汲むものと考えられるが、詳細な信仰の流れがまだ明らかではなく今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に引き続き2021年度もコロナウイルスのまん延のため、バリ島への出張を中止した。研究対象となる儀礼の執行者であるインフォーマントの住居はバリ島郊外にあり、インターネット環境が整っておらず、また高齢者のためメールでのやり取りが不可能であった。研究成果欄に述べたように、2021年度はバリ・ヒンドゥー儀礼で使用されているサンスクリット・テキストの内容分析を中心に、特に儀礼中の瞑想におけるタントリックな要素解明の研究を進め論文を発表したが、儀礼行為に関しては現地調査での疑問点の聞き取りが全くできなかったことが研究の遅れの原因である。2022年度もコロナ終息の目途が立たない現状では、引き続き文献研究中心になることも高い確率で予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は2回のインドネシア出張を予定しているが、コロナウイルスの終息の兆しが見えず、今年度の出張についても未確定である。このままでは儀礼分析に関する疑問点を明らかにするための現地調査がいつ行えるのかという問題があり、何らかの形でできるだけ対応を試みなければならない。これに関しては現地研究者に連絡を取り、疑問点の解消などに努める予定である。 いっぽうテキスト研究に関しては、国内でもある程度可能であるので、このまま継続して内容分析を続けていきたい。研究実績の概要にも述べたように、2021年度に内容を分析・考察したサンスクリット儀軌Vedaparikramaは、インドからジャワを経由しバリに入ってきたヒンドゥー教シヴァ派の流れを継承していると考えられる。今後はインドやジャワのシヴァ派の諸文献における儀礼と瞑想の内容分析も進め、バリで使用される儀軌の背景について研究を進めていく予定である。本研究の対象であるVedaparikramaがいつ編纂されたかは現在の所不明であるが、本儀軌と内容が近い他のバリ・ヒンドゥー文献についても本儀軌との比較検討を進め、本儀軌の歴史的背景を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスまん延のため、2021年度はインドネシア出張が実施できなかった。2022年度は2回のインドネシア出張を予定している。
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