2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Acceptance and the changes of Indian Religion in Balinese Hindu Rituals
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19K00064
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山口 しのぶ 東洋大学, 文学部, 教授 (70319226)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バリ・ヒンドゥー教 / Vedaparikrama / ヴェーダ・パリクラマ / Wedaparikrama / Balinese Hinduism / 通過儀礼 / Bayuh Oton |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドネシア、バリ島のヒンドゥー教儀礼の構造と特色を明らかにするとともに、インドのヒンドゥー教および仏教のバリにおける受容と変容を現地調査と文献研究から考察することを目的としている。2020~2021年度は新型コロナウイルス感染症の流行のためバリでの現地調査ができない状況であったが、2022年度はインドネシアへの入国制限も緩和された。このため2022年12月24日から2023年1月1日までバリに出張した。現地では、①バリ・ヒンドゥー教史で重要な位置にあるSamuan Tiga寺院(ギャニャール県)における寺院建造物とヒンドゥー図像の映像資料収集、②現地のヒンドゥー僧および研究者への聞き取り調査を行った。②では、ヒンドゥー僧および研究者に、研究課題であるバユ・オトン儀礼で使用されるサンスクリット儀軌に関する疑問点を質問し、またヒンドゥー儀礼に関するディスカッションも行った。 文献研究においては、2020年度から行った上記サンスクリット儀軌Vedaparikramaの翻訳研究を継続した。2022年度は儀軌の中でも中核の部分であるSivikaranaの行為について、その構造と特色を考察した。Sivikaranaにおいて僧侶は瞑想により僧侶の身体にシヴァ神の精髄が入り、シヴァ神との一体感を得る。その後シヴァ神を象徴する種子(bijaksara)を僧侶の心臓に布置する。神格との一体感や布置はタントリズムに顕著な行為であり、本儀軌もタントラ的な要素を多く含むことが明らかとなった。この研究成果として『東洋思想文化』第10号に論文「バリ・ヒンドゥー教のサンスクリット儀軌Vedaparikrama(Wedaparikrama)―儀軌の概要および部分訳(2)」を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度、21年度新型コロナウイルスのためにバリ島への出張が中止となったことにより、現地のヒンドゥー僧や研究者に十分な聞き取りを行えなかった。そのことが2022年度のバリへの渡航再開後も、いまだ影響をおよぼしていると考えられる。この間、主に文献研究を中心に研究を進めてきたが、これについても疑問点が多くある。特に儀軌のタントリズム的な要素と、バリでのシヴァ信仰の状況について今後現地での聞き取りが必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査が不十分であったことが進捗の遅れの最大の原因であるので、2023年度は2回の出張を行い、現地研究者およびヒンドゥー僧侶に十分な聞き取り調査を行っていきたい。文献研究においては、課題であったサンスクリット儀軌の内容把握と翻訳は一応終了したが、この課題に関しては、インドのシヴァ信仰との関連の考察を中心に、現地での聞き取りと文献調査を引き続き行う。本研究の中心課題であるバユ・オトン儀礼の構造分析に関しては、以上の聞き取り調査と文献研究により進めていきたい。また今後はさらに視点を広げ、「研究実績の概要」で述べたバリ・ヒンドゥー教において重要な寺院であるSamuan Tigaの調査も進め、バリ・ヒンドゥー教の歴史において、ヒンドゥー寺院がどのような機能を果たしてきたかについて考察を進めたい。この寺院研究はバリ・ヒンドゥー教のインド宗教の受容と変容に大いに寄与すると考えられる。
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Causes of Carryover |
2022年度で研究期間が終了する予定であったが、2020~2021年度はコロナ禍のため海外調査ができず、また2022年度も2回渡航予定が1回のみであり研究が不十分であったため、研究継続を申請し許可を受けた。2023年度は2回のバリ島での現地調査を予定する。
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