2019 Fiscal Year Research-status Report
A Synthetic Study of Prenatal Diagnosis in Islam: Discussions of Selective Abortion and the Disabled
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19K00077
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20422496)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イスラーム / 出生前診断 / 選択的人工妊娠中絶 / 中絶 / 女性 / 障害者 / 弱者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、出生前診断の可否や胎児に障害がある場合の中絶の可否について、イスラーム・スンナ派の法学者のファトワー(法的回答)を中心に分析した。サウジアラビアの法学者が監修しているイスラームQ and Aなどを参照し、妊娠中の夫婦などから寄せられる質疑応答を収集、読解し、論文を執筆した。スンナ派法学者のファトワーによれば、出生前診断については許可されていた。また重い障害が確定した場合、育てることが困難であれば、中絶は容認される。ただし、具体的な病名は挙げられておらず、医師の判断によるのかもしれない。一方、シーア派では許されないとするファトワーもみられるが、選択的中絶法が可決されたように、中絶が許されるケースもある。 また障害者だけではなく、広く弱者についても研究を進める必要があると考え、LGBTや女性、ジェンダーについても発表を行った。男女の役割分担がイスラームではかなりはっきり分かれており、欧米のような男女同権とは異なる男女観が支配的である。その規範から外れてしまうLGBTやフェミニストたちの活動が、イスラーム圏ではまだ困難であるが、欧米では始まりつつある。ただ男性中心のコーラン解釈の男女観や役割分担は、ガザーリーなどの古典思想にも受け継がれているということも重要であり、それについて論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サウジアラビアのファトワーが中心であるが、出生前診断や中絶の可否という、まだあまり日本では研究の進んでいない分野について、論文を執筆することができた。また男女の役割分担に着目して、イスラーム世界の女性やLGBTといった弱者の立場についても確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スンナ派のサウジアラビア以外のファトワーや、シーア派のファトワーを分析していきたい。また実際に出生前診断を受けたり、中絶や出産を体験した夫婦の体験談なども調べたい。さらに、イスラーム世界の夫婦や家族のあり方についても、古典時代から現代までの変遷を辿ることができればと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度は、使途の使用の制限のない経費を使用させていただいたため、予定よりも支出額が少なかった。今年度は、関連する文献収集を行うともに、研究発表等の出張を行う予定である。
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