2022 Fiscal Year Research-status Report
A Synthetic Study of Prenatal Diagnosis in Islam: Discussions of Selective Abortion and the Disabled
Project/Area Number |
19K00077
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (20422496)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | イスラーム / 出生前診断 / 婚姻 / 出産 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命をどこまで人為的に操作してよいかという生命倫理の問題は、社会的に大きな要請のある極めて重要な分野であり、イスラーム研究においてほぼ未開拓の分野でもある。現代のイスラーム世界では、古典イスラームの死生観を踏まえつつ、どのような生命倫理の議論がなされており、どのように実践されているのか。それを明らかにすることは、イスラーム研究の新たな領域を切り開くことになる。 本研究では現代のイスラーム文献や医療現場の報告などを読解し、出生前診断とつながりのある問題の中でも、とくに選択的人工妊娠中絶の可否や、障害者とその家族を取り巻く状況、さらに社会的弱者・困窮者とされる人々についても広く検討する。イスラームの出生前診断(体外受精の際の着床前診断も含む)の問題は、優生主義や選択的中絶、さらに障害者や難病患者の生きる権利といった議論とも関連する極めて重要なテーマであるにも関わらず、まだ世界的に研究の進んでいない分野である。 2022年度は、婚姻、出産に関する問題として、シーア派の一時婚(古典的なシーア派とスンナ派の論争および現代における実践)や生殖補助医療(配偶子の組み合わせ等に関するシーア派とスンナ派の比較や、医療ツーリズムなど)について、再検討した。またコロナ禍における中東イスラーム世界(とくにエジプトとサウジアラビア)の感染症対策の様相をまとめるとともに、ムスリムの宗教実践(とくに金曜礼拝、集団礼拝)についてファトワーを中心に考察し、論文を執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イスラームの婚姻制度(とくにシーア派の一時婚)や生殖補助医療についてまとめることができた。またコロナ禍におけるムスリムの宗教実践(とくに金曜礼拝、集団礼拝)というテーマについても検討できた。出生前診断の結果を見て生んだ女性、中絶を選んだ女性、障害者というテーマについても資料を収集し、論文執筆を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
出生前診断の結果を見て生んだ女性、中絶を選んだ女性、障害者というテーマについても資料を収集しながら、論文を執筆する。また性的マイノリティといった弱者とされる人々についても検討したい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により旅費の支出がほぼなかったため、次年度使用額が生じた。今後は出張を行う予定である。
|