2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K00078
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平瀬 直樹 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (10283087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大内氏 / 修験 / 東大寺 / 両堂衆 / 高野山 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,先行研究を読破することによって修験道研究の方向性を定めることができた。中世の修験者は、基本的に顕密寺院と距離を置くが、門跡に組織される一派と、フリーな一派がある。修験道研究では、本山派・当山派という系列に注目するだけでなく、学侶が率いる顕密寺院と地域権力(守護や国人)、そして地域の百姓との関係の中でとらえる必要があるということである。現地調査としては、10月10日(土)、求菩提山(福岡県豊前市)の行場を踏査した。あわせて山麓の求菩提資料館で副館長の相良悦子氏から求菩提山修験者が伝えた「まじない」の記録について説明を受けた。求菩提山の事例から、大内氏領国の豊前国内に、領国を支配する大名に奉仕するだけでなく、地域住民の生活と密接に結びついた大規模な修験集団の特質を知ることができた。 2,東大寺の「法華堂衆」という中下層身分集団に伝えられた文書群の分析を進めた。その結果、「通夜衆」という幹部によって行法が伝持される一方、集団が「浄行衆」と「里衆」に二極化していることを明らかにした。また、高野山の「行人」と異なり、東大寺「法華堂衆」は学僧の一種であり、身分的位置付けは異なるが、修験者であることが自己の存在理由となっている点が共通する。 3,加賀国の修験者の状況を考察すると、医王山修験は天台系であり、白山の組織は天台系の学僧が主体であり、実は修験集団は真言系の組織外の存在であるというように、違いがある。白山を修験の聖地とだけ見るのではなく、天台学僧の活動を視野に入れて全体像を再検討する必要がある。 4,加賀国には周防国の大内氏のように領国支配に宗教を活かす大名は存在せず、また白山や医王山のような山岳寺院と地域の民衆生活との関係もはっきりしない。加賀国一向一揆の特質は、このような宗教勢力と地域の関係を踏まえて理解すべきであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染により文書調査や現地調査を断念しなければならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1,大内氏領国(九州・山口)の現地調査についてはしばらく見合わせ、先行研究や活字史料の分析に力を注ぎたい。現地調査としては金沢に近い医王山を踏査し、戦国時代の修験者と一向一揆との関係について考察を深めていきたい。 2,東大寺法華堂衆についての研究論文をまとめることを目指す。 3,①大内氏領国の山岳寺院、②加賀一向一揆の内部構造、③東大寺法華堂衆の組織構造、④現在の修験道研究と高野山の行人の関係、これら4つの考察をまとめて一つの著書を刊行することを目指す。
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Causes of Carryover |
<次年度使用が生じた理由> 新型コロナ感染の拡大により史料調査や現地踏査を断念したから。 <使用計画> 史料調査としては、関西地方の中で比較的感染が緩やかな奈良県と和歌山県の史料保存機関や山岳霊場に出張する。奈良県では東大寺図書館(奈良市)と天理大学図書館(天理市)であり、和歌山県では高野山大学図書館(高野町)である。現地踏査としては、奈良県の内山永久寺跡(天理市)、高野山(高野町)である。
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