2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00080
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
岩田 文昭 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00263351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末村 正代 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (60809664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大乗仏教 / 近角常観 / 鈴木大拙 / 久保猪之吉 / リクール / ヘルゲル / 大峽秀栄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、浄土教における物語が動的に展開していったさまを、歴史学や仏教学などの実証的研究の成果を取り入れ、それを宗教哲学の観点から解明することを目指すものである。 研究代表者の岩田文昭は、2019年度には、主として二つの領域の研究を進めた。第一は、大乗仏典の成立についての近年の研究成果の調査である。この調査により、下田正弘の論に、本研究の基盤を見いだすことができたと考えている。下田の論は、大乗仏典を作成した特別な在家集団が存在したわけではなく、仏典という物語を作成することによって大乗仏教の運動が起こったとするものである。しかも、その説明をデリダやリクールなど西洋の哲学者の論に依拠して展開している点、本研究の遂行の指標となる。 第二は、近角常観と文学作品との関係についての研究である。具体的には、歌人で医師であった久保猪之吉と近角との関係を求道開館所蔵の書簡や、『明星』に掲載された久保のエッセイ、さらに久保が寄稿し、近角が中心になって刊行した冊子『星月夜』によって事実関係を解明した。この研究の成果は、久保の勤務先であった九州帝国大学の所在地、福岡市の研究者の注目を受け、福岡市図書館で公開講演を行い、また福岡市図書館刊行の冊子で発表をした。 研究分担者の末村正代は、鈴木大拙に関する研究を中心に行った。第一に、鈴木と中国思想に関する研究について、関西大学東西学術研究所・近世近代日中文化交渉研究班で進めてきた研究の成果を同研究所叢書で発表した。第二に、大拙をはじめとした禅者の越境に関する研究に関して、2019年5月の東アジア文化交渉学会において、とくに釈宗演門下である大峽秀栄とオイゲン・ヘリゲルの交流という観点から発表をおこない、当日の議論を踏まえた報告を『井上克人教授退職記念論文集』に発表した。また、公益財団法人松ケ岡文庫の資料調査を計五回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大乗仏教の成立を物語の発生と一体化して捉える、下田正弘の研究を見いだすことができたことにより、本研究の基盤を確保したことは大きな成果であった。他方、善導や法然らの研究においては、資料収集の段階であるため、全体としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
大乗経典仏典を物語として読み解くという視点をもとに、善導や法然、さらに近代の近角常観や鈴木大拙らの研究を推進する。
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Causes of Carryover |
残額は、3277円という少額である。次年度は研究成果発表のためのサイトの整備を予定しており、この残額もそれにあてる予定である。
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[Book] 再考 三木清2019
Author(s)
田中久文、藤田正勝、室井美千博、岩田文昭ほか
Total Pages
308
Publisher
昭和堂
ISBN
4812218314
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