2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00080
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
岩田 文昭 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00263351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末村 正代 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (60809664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大乗経典 / 善導 / 浄土変相図 / 三木清 / 鈴木大拙 / 千崎如幻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、浄土教における物語が動的に展開していったさまを、歴史学や仏教学などの実証的研究の成果を取り入れ、それを宗教哲学の観点から解明することを目指すものである。 研究代表者の岩田文昭は、2020年度には、主として二つの領域の研究を進めた。第一は、昨年に引き続き、大乗仏典の成立についての近年の研究成果の調査である。この調査によりとくに佐々木閑の研究を熟読することにより、初期仏教と大乗経典に関係についての理解を深めることができた。また藤田宏達の研究により、原始仏教と浄土経典との詳細な知見をえることができた。 第二は、中国の善導の研究を推進した。主に、善導の『観無量寿経疏』理解について、梯実圓、津田左右吉、牧田諦亮、齋藤隆信、佐藤成順、柴田泰山らの著作により読解が深まった。また浄土変相図について大西磨希子らの研究をもとに先端の研究をサーベイした。その他に、三木清の親鸞理解をめぐる論考の英訳を雑誌The eastern buddhistに掲載する準備をおこなった。また筆頭編集者として『知っておきたい日本の宗教』を刊行し、広い視野からの日本の宗教のあり方についての研究を発表した。 研究分担者の末村正代は、2019年度につづき、釈宗演門下である鈴木大拙・千崎如幻らの禅越境活動に焦点を当てて研究をおこなった。2020年8月に開催された宗教倫理学会夏季研修会では、とくに千崎如幻による英訳『無門関』を取り上げ、海外布教を展開した禅者の言説を検討した。また、リチャード・ジャフィ氏(デューク大学)による鈴木大拙関連論文の翻訳をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、コロナ禍のため、研究が予定通りに進捗しなかった。龍谷大学の図書館など、文献調査をする予定だった図書館が開館時間の制限のため十分に使えなかった。また、対面で 研究者にインタビューすることも困難であり、とくに松ケ丘文庫の調査はまったくできなかった。 その中にあっても岩田文昭は、大乗仏典や善導についての著作を読み進め、現在の浄土教の研究の知見を広げることはできた。末村正代は、近代禅思想および禅者に関する研究を概ね順調に進捗させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の岩田は、まず、善導の観無量寿経解釈の独自性を物語論の観点から明確にする。その際、善導の思想の影響下において形成された当麻曼荼羅の物語性に注目する。あわせて、法然の思想形成についての研究と、法然死後の法然伝の形成過程の研究も行う。 研究分担者の末村は、引き続き千崎如幻による英訳『無門関』を取り扱うと同時に、鈴木大拙による英訳『大乗起信論』も対象に加え、近代禅思想・禅者に関する研究を継続する。現時点では、これらの成果を近代仏教史研究会において発表する予定である。松ケ岡文庫調査に関しては、移動制限が解除され次第鈴木ビアトリス資料を中心とした未整理資料調査を再開し、大拙の浄土論・禅論との関連を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、新型コロナウイルスの影響で遠方への移動が難しく、計画していた学会参加や資料調査を実施できなかったためである。 本年度には再開を予定しているので、2020年度の次年度使用分は当該調査に係る旅費、加えて浄土思想、近代禅思想・近代仏教関連文献の購入費等に使用する計画である。
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