2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00081
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
諸岡 了介 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (90466516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 死の民俗 / ホスピスケア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、ホスピスケアの現場にて報告される、〈お迎え〉体験、〈中治り〉現象、および死者臨在感覚といった「死の民俗」である。本研究では、申請者がこれまで携わってきた「死の民俗」の実証的研究を基礎に、現代日本における実態の探究をさらに進めるとともに、それを西欧との国際比較の観点から分析し考察していくことを目的としている。 研究計画初年度に当たる2019年度はまず、ホスピスケアの先進地であるイギリスをはじめとした西欧諸社会との国際比較を進めるべく、その歴史的・宗教的背景について探究と整理を行った。その結果、「死の民俗」の代表的な現場であるホスピスケアについて、それがたんにイギリスやキリスト教文化圏に特殊な条件下にあるのみならず、近現代社会のより広い社会条件下に置かれている様子が示された。また、ケア現場への社会還元の一環として、「死の民俗」に関するケア従事者向けの手引き冊子を日本語に翻訳し、島根大学学術情報リポジトリにて公表した。 日本からの発信としては、現在把握できている範囲で現代日本の「死の民俗」の現状をイギリスのバースやダラムにて発信を行い、国際比較の観点から研究者や市民と議論を行った。とりわけ、バース大学「死と社会」研究センターにおけるセミナーでは、イギリスのみならず、中国やオーストラリアの事例との比較考察を進めることができた。 このほか、今後の研究計画遂行に向けた基礎作業として、「死の民俗」に関する研究や死生学一般についてその国際的研究動向の理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度にあたる2019年は、(1)国際比較に向けた、イギリスの歴史と現状の探究、(2)同じく国際比較の視点を獲得するための、現代日本の現状に関する国際発信と議論の展開、(3)今後の研究計画の基礎作業としての国際的研究動向の理解の深化という三点について作業を押し進めた。 これら三点いずれについても、おおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画初年度にあたる2019年は、(1)国際比較に向けた、イギリスの歴史と現状の探究、(2)同じく国際比較の視点を獲得するための、現代日本の現状に関する国際発信と議論の展開、(3)今後の研究計画の基礎作業としての国際的研究動向の理解の深化という三点について作業を押し進めた。これらの作業から示されたことは、たんに「死の民俗」の現状について「スナップショット」式の国際比較研究をするだけではなく、歴史的・文化的背景を掘り下げた上で比較研究を行うことが重要なことである。 具体的な作業としては今後、現代日本の現状について引き続き国際的な発信と議論を行い、比較の視点を深めるとともに、日本およびヨーロッパにおける「死の民俗」について歴史的・文化的考察を押し進めてゆく。その際、狭義の「死の民俗」にのみ焦点を当てるのではなく、死や死者をめぐる社会史的考察を展開しながら、そこに「死の民俗」を位置づける作業を行っていく。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた国内出張が社会情勢から延期となったため。
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