2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00081
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
諸岡 了介 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90466516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 死の民俗 / ホスピスケア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、ホスピスケアの現場などで報告される、〈お迎え〉体験、〈中治り〉現象、あるいは死者臨在感覚といった「死の民俗」である。本研究では、申請者がこれまで携わってきた「死の民俗」の実証的研究を基礎に、現代日本における実態の探究をさらに進めるとともに、それを西欧との国際比較の観点から分析し考察していくことを目的としている。 研究計画二年目に当たる2020年度には、初年度に行ったフィールドワークや文献調査をもとに、イギリス社会における「死」の扱われ方を、宗教的多元性の増大という社会背景との関連で整理を行った。死の民俗の現れ方について、死を迎える場所や終末期患者の扱い方は決定的に重要であるが、イギリスにおけるホスピスケアの発達過程とその世界的普及の過程を辿るとともに、イギリス社会では移民層に関してこれから大きな変動が予期される状況を統計データなどから分析した。このことは、よりいっそう宗教的に多様な背景の下に「死の民俗」が表現され、また扱われることを意味している。 とくには、終末期体験の一種として、死者の存在を感じるという「死者臨在感覚」について、医学・看護学・死生学・宗教学・民俗学・超心理学など、各分野に散らばって存在する先行研究の探索を進めるとともに、その扱われ方について分析を進めた。「死者臨在感覚」は、近年グリーフケアの新しい標準となった「継続する絆」論とも関わりの深い主題である。これは次年度に論文化し公表する予定になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度には、研究計画の軸に(1)国際比較に向けたイギリスの歴史と現状の探究、(2)同じく国際比較を意識した、現代日本を現状に関する国際発信と議論の展開、(3)さらなる研究深化のための国際的研究動向等の把握といった作業計画を掲げ、いずれも順調に進めることができた。 しかし2020年度については、新型コロナウイルスの感染拡大につき、イギリスでの調査や研究発表、国内における調査が困難になり、当初の研究計画の変更が余儀なくされた。その分は、一部計画を入れ替え・前倒しして文献調査を重点的に実施する、オンライン上での研究交流を行うといった方策で補った。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外での調査や研究発表、国内における調査が困難になり、当初の研究計画の変更が余儀なくされた。2021年度については、引き続き感染状況を鑑みながら調査等の可能性を探りつつ、オンラインでの調査・研究発表などの代替手段を用いながら研究計画を遂行していく。 また、類例のない「死の民俗」の国際比較研究として、これまで積み重ねてきた研究成果を論文等のかたちで発表していくとともに、その背景を成す死をめぐる現代世界の社会状況に関する考察についても公表を行っていく。
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Causes of Carryover |
予定していた国内・海外での調査および研究発表について、新型コロナウイルスの感染拡大とそれによる各種の移動規制により当該年度内には実施不可能となったため。
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Research Products
(1 results)