2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00081
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
諸岡 了介 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90466516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 死の民俗 / ホスピスケア / 死生観 / 世俗化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、ホスピスケアの現場などで報告される、〈お迎え〉体験、〈中治り〉現象、死者臨在感覚(sensing the presence of the dead)といった「死の民俗」である。本研究では、申請者がこれまで携わってきた「死の民俗」の実証的研究を基礎に、現代日本における実態の探究をさらに進めるとともに、それを西欧との国際比較の観点から分析し考察していくことを目的としている。 研究計画三年目に当たる2021年度は、前年度までに行ったフィールドワークや文献研究を踏まえつつ、死の民俗に関する研究史の探究をさらに深める傍ら、現代日本・現代世界において死の民俗が語られる社会的背景に関する考察を深めた。 死の民俗に関する学説史研究では、とくには、終末期体験の一種として、死者の存在を感じるという「死者臨在感覚」について、医学・心理学・宗教学・民俗学・超心理学など、各分野に散らばって存在する先行研究の探索を進めるとともに、その扱われ方について分析を進め、近年グリーフケアの新しい標準となった「継続する絆」論との関わりについて理解を深めた。その成果は、本年度(2022年度)中に論文として公表を予定している。 現代日本・現代世界において死の民俗が語られる社会的背景については、日本で言えば東日本大震災や新型コロナ感染拡大といった社会的事件とも結びついたグリーフケアの展開や、さらにその基層にあり、現代世界になお支配的な世俗主義的な社会秩序に関する考察を行った。「死の民俗」といわゆる宗教との結びつきは複雑であり、その動態に反映されている現代世界の認識構造にまで考察の必要が及んできている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度には、研究計画の軸に(1)国際比較に向けたイギリスの歴史と現状の探究(フィールドワークを含む)、(2)同じく国際比較を意識した、現代日本の現状に関する国際発信と議論の展開(国際発表を含む)、(3)さらなる研究深化のための国際的研究動向等の把握(海外の研究者との対話を含む)といった作業計画を掲げ、いずれも順調に進めることができた。 しかし2021年度は、2020年度と同様、新型コロナウイルスの感染状況が改善せず、イギリスでの調査や研究発表、さらに国内の医療機関などを対象にした調査を実施することができなかった。そのため、2021年度は文献調査に力を注ぐとともに、当初は三年計画であったこの研究計画自体を一年延長し、「死の民俗」に関する実証的研究と、研究史的研究およびその社会的・歴史的背景に関する考察の総合を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度と同様、新型コロナウイルスの感染状況が改善せず、海外での調査や研究発表、国内における調査を実施することができなかった。このことから、2021年度からは「死の民俗」の研究史と、それが語られる社会的・歴史的背景に関する考察にも力を注いできており、最終的には、「死の民俗」に関する実証的研究との総合を行う。 こうした研究目標を達成するために、当初は三年計画であった研究計画を一年延長し、これまで積み重ねてきた研究成果について、その背景を成す死をめぐる現代世界の社会状況(とくにその根底にある世俗的性格)に関する考察を加えながら、論文等の形で公表していく。 フィールドワークを含む国際比較を狙った本研究計画の実施にとって、新型コロナウイルスの蔓延は予期せぬ大きな障害となってきたが、現代世界における死の問題に関わる研究として、新型コロナウイルスの問題も考察の範疇に加えていきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、2021年度についても新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、もともと予定していた国内外における調査や文献収集、さらに学会等への参加が叶わなかった。そのため、この研究計画自体を一年間延長し、当初予定していた研究内容の遂行を可能な範囲で目ざすこととした。2022年度は、新型コロナウイルスの状況を見ながら、調査研究の遂行や、学的交流を含んだ研究成果の発表を行いたい。以上が、次年度使用額が生じた理由である。
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Research Products
(3 results)