2019 Fiscal Year Research-status Report
米国キリスト教福音派による社会貢献運動:貧困問題への取り組み
Project/Area Number |
19K00083
|
Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
堀内 一史 麗澤大学, 国際学部, 特任教授 (60306404)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | キリスト教福音派 / 福音派右派 / 宗教右派 / 福音派左派 / 貧困問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大テーマである、米国キリスト教福音派による運動の変容と新たな運動の傾向が今後の米国社会や政治に及ぼす影響の可能性と限界の研究の第2フェーズである。(第1フェーズは、福音派右派団体と福音派左派団体の地球温暖化をめぐる環境保護に関する対策の比較研究[基盤研究(C)15K03863]であった。) 本研究では、米国キリスト教福音派の貧困に関する思想と貧困対策に関す実証研究を行う。具体的には、キリスト教福音派の宗教的・政治的には保守の立場をとる福音派右派(宗教右派)と宗教的には保守的立場をとりながら政治的にはリベラルな福音派左派が存在するが、両者間に見られる相違を調査することを目的としている。研究対象となる貧困対策を行う団体は、国際救援団体、大学・神学校、地域の教会に大別されるが、本研究の研究対象は、福音派の大学・神学校では、Asbury Theological SeminaryおよびEastern University (Evangelicals for Social Action)。保守的福音派の地域の教会では、Lutheran Church Missouri SynodおよびSaddleback Churchである。 研究仮説として、貧困問題を中心とする教会側の社会貢献活動に対して、保守的な福音派右派とリベラルな福音派左派の教会とでは、前者が消極的である一方後者が積極的であると考えている。終末論の立場から、保守的な福音派は神の国の建設の前にやってくるキリストの再臨に備え信仰を深めることから、現状維持・伝統回帰の立場を取り現世改革に無関心であるのに対し、リベラルな福音派は、人間の手で神の国を実現しなければキリストの再臨はありえないと考えるために、現状打開・未来志向の立場をとり現世改革に積極てきになる、と考えるからである。この仮説の実証が本研究の意義である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究対象となる貧困対策を行う団体は、福音派の大学・神学校では、Asbury Theological SeminaryおよびEastern University (Evangelicals for Social Action)。保守的福音派の地域の教会では、Lutheran Church Missouri SynodおよびSaddleback Churchである。 2019年度は、文献収集と情報収集という調査の準備段階として、Asbury Theological SeminaryのAndrew Swartz教授、ペンシルベニア州Eastern Universityの名誉教授でEvangelicals for Social Action(ESA)創始者のRon Sider氏ならびに、ESAの代表を務めるNikki Toyama SzetoをワシントンDCに訪問し、情報収集することができた。 しかしながら、昨年度の訪問で予定していた保守的な福音派右派のLutheran Church Missouri Synod及びSaddleback Churchに関しては、なかなかアポイントメントが取れなかった。そのために2020年2月に、かつて訪問経験があるため牧師などとの良好な関係が確立できているカリフォルニア州モデスト市にある比較的小規模なメガチャーチを2020年度の予算で訪問を検討することになった。 ところが、3月以降に本格的化した新型コロナウイルスの感染拡大により米国訪問が危うくなり、いまだに訪問の目途が立っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方針については、かなり厳しいものがある。なぜならば、前述のようにコロナ禍の終息が見えないため、保守的福音派の貧困問題に関する社会貢献活動に関する情報やデータが収集できるかどうかに関する先行きが不透明だからである。 しかしながら、米国におけるCovid-19の感染者数は200万人を超え、第2波の到来が予測されているため、また、教会での集会が三密を避けるために現在のところ禁止・あるいは自粛状態であるため、2020年秋の訪問も危ぶまれる。 こうした事情から、今後は、実証研究を諦め、現在まで収集した福音派左派の情報を基に、福音派左派の貧困問題に関する社会貢献活動を主体とする研究へと軌道修正を図りたい。 そのために、今後は以下の方向で研究を進めることとしたい。米国の福音派の歴史を辿り、福音の伝道を重視して社会との分離主義を貫く原理主義から1940年代に分派した、神学的・政治的保守で福音の伝道を重視する新福音派(ハロルド・オケンガやビリー・グラハムなど)の運動。その中からさらに、公民権運動の1955年以降の歴史の中で、社会改革運動には無関心であった新福音派から分派し、神学的には保守だが、政治的にはリベラルな福音派左派の軌跡をたどる。そうした延長線に、2008年の大統領選挙でオバマ政権の発足に少なからず寄与した福音派左派の現在の運動について、貧困問題撲滅の観点から、前述の福音派の大学・神学校・団体の活動について史的・実証的研究を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度に実施した米国訪問と現地調査の一部が実施できなかった。また、今年度購入予定であったパソコンやICレコーダーの購入が今だ行われていない。次年度に関しては、もしコロナ禍が終息し、米国訪問が可能になれば、保守的な福音派右派の実証研究はできないものの、継続してリベラルな福音派左派の関係者の訪問お呼び面談をして、情報のさらなる収集に充てる予定である。
|