2020 Fiscal Year Research-status Report
米国キリスト教福音派による社会貢献運動:貧困問題への取り組み
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19K00083
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
堀内 一史 麗澤大学, 国際学部, 特任教授 (60306404)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キリスト教福音派 / 宗教右派 / 福音派左派 / キ原理主義原理主義 / 貧困問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国キリスト教福音派による運動の変容と新たな運動の動向が今後の米国社会および政治に及ぼす影響の可能性と限界に関する研究の第2フェーズである。(第1フェーズは、宗教右派と福音派左派の気候変動をめぐる環境保護対策の比較研究<基盤研究(C)15K03863>であった。) その背景には、終末論が関係している。保守的な福音派および原理主義者はプレ・ミレニアリズム(前千年王国説)を信奉し、現状維持・伝統回帰の立場をとり、リベラルな福音派左派が、ポスト・ミレニアリズム(後千年王国説)を信じ、現状打開・未来志向の立場に立つとされる。このことから、研究仮説として、貧困問題を中心とする米国のキリスト教会側の社会貢献活動に対して、保守的な宗教右派、もしくは原理主義に立つ団体は消極的であるが、よりリベラルな福音派左派は社会貢献活動について積極的であると考える。これを現地調査に基づき跡付けることが当初の計画であった。 しかしながら、19年度の報告で示したように、コロナ禍により米国への渡航が中止となり、かつ全米のキリスト教会が閉鎖され実質的な社会貢献活動に関する情報やデータ収集が不可能となった。そのため、研究方法を現地訪問による聞き取り調査中心から文献調査中心へと方針転換を行い、文献研究によって貧困に関する思想および運動に関して次の立場に関する史的・実証研究を行ってきた。すなわち、①1940年代に福音の伝道を重視して原理主義から離脱した新福音派の立場。②1955年以来の公民権運動の中で、社会改革運動には無関心であった新福音派から離脱して社会改革に身を投じ、その後2001年のブッシュ政権における「信仰に基づくイニシアチブ」を支援したロン・サイダー、ジム・ウォリスら福音派左派の立場。③2008年大統領選挙でオバマ政権樹立に少なからず貢献したとされる福音派左派および保守的福音派の立場である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗として以下のことが言える。①新福音派の代表者であるビリー・グラハムはプレ・ミレニアリズムを信奉しておりその立場から、人種融合や貧困の解消は神の業であり人はキリストの再臨に備え信仰を深めることに専念すべきと考え、ポスト・ミレニアリズムに立ち人による社会の改善がなければキリストの再臨は実現しないと信じるキング牧師による公民権運動およびその後の貧困撲滅運動については批判的であった。②1970年代になって、保守的な新福音派から離脱し社会改革を推進した福音派左派のロン・サイダーはEvangelicals for Social Actionを立ち上げ、ジム・ウォリスはSojournersという雑誌と運動団体を組織して、キリスト教に基づく貧困問題を含む種々の社会問題の解決に向け運動を展開している。彼らは、民主党支持してきたが、共和党ブッシュ大統領の「信仰に基づくイニシハチブ」を支持・支援した。
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Strategy for Future Research Activity |
19年度の研究方法および内容の変更に伴い、前述のように変更(①③③)を行い、20年度は①および②に関してはすでにおおよその研究は終了している。今後は③2008年のオバマ政権樹立後の福音派左派における貧困問題への社会貢献運動についての研究を進める段階に来ている。
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Causes of Carryover |
20年度は新型コロナウイルスの世界的感染拡大のために、米国のキリスト教会での礼拝や諸活動がクラスターの発生源となることから中断されており、さらには米国への渡航ができず、予算が消化かできなかったことが主な原因である。
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