2023 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における「世界の諸宗教」像の展開に関する基礎的研究
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19K00086
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
星野 靖二 國學院大學, 研究開発推進機構, 教授 (50453551)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 「世界の諸宗教」像 / 宗教のイメージ / 比較宗教 / 近代日本宗教史 / 宗教概念 / 宗教についての知 / 『日本之教学』 / 黒田行元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本における「世界の諸宗教」像の形成過程について、いつから、どのようなものが、どのようにして流通するようになったのかといったことを検討するものである。 最終年度(一年延長)となる2023(R5)年度の研究成果として、国際学会での英語発表を一回、日本語での学会発表を一回行った。 成果内容として、引き続き雑誌『日本之教学』の内容を検討し、明治中期における「世界の諸宗教」像について考察を加えた。イスラーム・ユダヤ教についての論説が少ないことを指摘した上で、編集側の姿勢について検討し、宗教の出発点を来世に幸福を求める「妄念」としていること、その「妄念」は単に否定されるのではなく現実に宗教が広く行われているとしていること、かつ宗教は人の「道義心」を渙発し、またその点において国家に有用であるとしていること、などが述べられていることを確認した。 また、期間全体のまとめとして、明治初期の「世界の諸宗教」像が、その後どのように展開したのか、ひとまず明治末頃までをめどに考察を加えた。一方では、やはり明治初期から中期にかけての「世界の諸宗教」像について、訳語を含めて知識の標準化の途上にあり、その後、直接的な継承・連続性はあまり見られないように思われた。しかし、これについては資料の蒐集を更に行う余地があるため、暫定的な結論としておきたい。他方、社会的有用性を重視し、宗教進化論的な枠組を前提している、などといった宗教そのものについての枠組については、ある程度共有されていたことが確認できた。 期間全体を通した結果として、特に明治初期における「世界の諸宗教」像については新たな知見が得られ、例えば黒田行元のように、明治初期において西洋の書物、特に地理書から「世界の諸宗教」にまつわる知識を得て、これを独自に日本語訳して著述していた人物があったことを指摘することができた。
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