2019 Fiscal Year Research-status Report
宣教師資料に見る「満洲国」:植民地状況下におけるキリスト教伝道
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19K00090
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 祐子 明治学院大学, 教養教育センター, 教授 (20440183)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 満洲国 / キリスト教 / 信教の自由 / 植民地支配 / キリスト教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は3年間の研究期間中に、中国東北部におけるキリスト教布教に伴う諸事業の具体的展開を「満洲国」成立前後の時期を中心に、①1935年中国人キリスト者一斉検挙、②「満洲国」学制の完成とキリスト教学校法人化問題、③「満洲国」における神社参拝問題、④満洲基督教会設立の4つのテーマに即して考察することを研究目的としている。 このうち昨年度は主に③について、スコットランド教会及びアイルランド長老教会宣教師アーカイブと「満洲国」で発行され最も広く読まれていた『満洲日日新聞』を用いて考察した。 「満洲国」政府は、1935年から各キリスト教学校に孔子廟参拝を強制していたが、申請者は既出論文において、この孔子廟参拝が1939年から神社参拝にとってかわられ始めたことを推論していた。昨年度は二つの資料を読み込むことによって、どの都市のどの学校が神社参拝強制に対していかなる抵抗を試み、その結果何が起きたのかを明らかにし、この推論を具体的に裏付けることができた。 またこの問題のさらなる解明には、「信教の自由」の侵害を中国人キリスト者自身がどのように受け止めたのかという側面の考察が不可欠である。昨年度はその前提として、19世紀末以降の立憲政治をめぐる論議の中で少しずつ注目されるようになった「信教の自由」の概念を、中国人キリスト教知識人がどのように理解したのかを、19世紀後半から20世紀にかけて刊行されていたキリスト教漢文雑誌『万国公報』を中心に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染拡大に伴って海外渡航が不可能となり、資料調査の予定に影響が出たものの、昨年手掛けたテーマは、国内でアクセス可能な資料とすでに保有している資料によって十分研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は今年度所属大学からサバティカル研究休暇を取得しており、当初は台湾中央研究院で2か月間資料調査を行い、夏季休暇には昨年できなかったスコットランドとアイルランドでの宣教師アーカイブの調査を行う予定だったが、コロナ禍に伴い、大幅な予定変更を迫られている。 したがって当面は手持ちの資料とデジタル資料を駆使して研究課題の考察に取り組むほかない。今年度は、昨年度来の課題である「信教の自由」と神社参拝の問題についてまとめ、さらに2018年度末に発表した研究ノートのテーマである「満洲基督教会」の設立について考察を深め論文執筆を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画では、昨年度は夏季休暇を利用してスコットランドとアイルランドで資料調査を行う予定だったが、中国の上海大学から1か月間客員教授として招聘されることが昨年度の4月に決定したため、こちらに時間を割くことになった。同じように予定していた中国での国際学会には参加したものの、ちょうど招聘期間に重なっていたため旅費が発生しなかった。以上が繰越額が発生した理由である。 現在のコロナ感染状況を考えると、昨年度果たされなかった海外資料調査を、繰り越しの予算を執行して今年度実施できるかどうかは不透明であるが、来年度までの研究期間中に何とか実施したいと考えている。
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Research Products
(4 results)