2023 Fiscal Year Annual Research Report
アルゼンチンにおけるLGBT権利要求をめぐる宗教言説の変容
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19K00091
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡部 奈々 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (00731449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルゼンチン / LGBT / 同性婚 / トランスジェンダー / カトリック教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①近年家族やジェンダー問題に対して穏健な姿勢を示しているアルゼンチンカトリック教会の宗教言説の変容を分析し、②LGBTや同性婚に強く反対するペンテコステ派を中心とするプロテスタント教会の言説と比較・検討する。さらに、③実際に教会による同性婚の承認を求めているLGBT当事者たちを調査し、彼ら/彼女らの主張を支える宗教言説を考察することである。 最終年度に実施した研究成果として『西洋における宗教と世俗の変容Ⅰ カトリック的伝統の再構成』(伊達聖伸・渡辺優編、2024年、勁草書房)の「現代アルゼンチンにおけるカトリック教会と国民宗教意識」を執筆した。アルゼンチン国民のカトリック信仰の変化が、同性婚や人工妊娠中絶に対する認識の変容と関連している点を明らかにした。また2024年度の出版が決定している『ラテンアメリカのLGBT―権利保障に関する6か国の比較研究』(畑惠子編、令和6年度科研費研究成果公開促進費)の「アルゼンチン:同性婚合法化のその先へ-トランスジェンダーの権利保障」を執筆した。また、2023年5月にはメキシコ大使館でのシンポジウム「ラテンアメリカと日本 婚姻平等:同性婚の法制化への道」で「ラテンアメリカにおける婚姻平等について」発表した。 新型コロナのため延期していた現地調査を2024年3月に実施した。同性婚のみならず人工妊娠中絶にも反対するカトリック教会とペンテコステ派が、昨年末に誕生した新政権のもとで2020年に制定された中絶法の廃止を画策する様子を観察できた。また同性婚をした元カトリック司祭へのインタビュー、トランス公職クオータ制により就職したトランス女性へのインタビューも実施した。調査分析と成果発表は2024年度に持ち越すこととなる。
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