2021 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Study of Japanese Buddhism and East Asian Buddhism; with focus on both Politics and State Power
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19K00097
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
松尾 恒一 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50286671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (10513517)
中西 裕二 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50237327)
上島 享 京都大学, 文学研究科, 教授 (60285244)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東南アジア仏教 / 日本仏教 / 国家統治と寺院、仏教儀礼 / 東南アジア・東アジアにおける仏教、民間信仰 / モンゴルのチベット仏教 / 上座部仏教圏と大乗仏教圏の、宗教と社会の比較研究 / 寺院組織 / 民俗神と仏菩薩との習合と社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究は、東南アジアを中心とする上座部仏教圏と大乗仏教圏である日本との比較による、国家と宗教との関係性を文化人類学、民俗学、歴史学の専門研究者との協業により考究することを目的とする。 昨年度(2021)は、国立歴史民俗博物館の「東アジア・東南アジアの宗教・信仰の交流、歴史と伝承」プロジェクト研究と協業し、内蒙古出身の蒙古貞夫氏(学芸大学研究員)とともに、内蒙古東部地域における農耕・牧畜のための祈願についての伝承調査を推進した。内蒙古は、大乗仏教圏のチベット仏教のラマ僧による布教が行われてきた地域で、戒律が重視されるとともに六道輪廻の信仰が濃厚である。しかしながら、寒冷地帯における遊牧・農耕の生活は、伝統的に稲作のウェイトの大きい日本や東南アジアと異なるものの、民間レベルでの仏教と民俗神との混淆といった点で日本との共通性も認められる。遊牧地域において、動物の屠殺の際の動物霊の転生を願う祈りに六道輪廻の思想の影響が認められることが明らかになった。今年度はさらに日本及び東南アジア仏教圏における自然環境と生業、社会における信仰との関係性について比較、考究を進める。 戒律のなかでも動物・魚類等の殺生を禁ずる殺生戒の実践について、日本社会と東南アジア社会との差異に注目しての討議を推進した。古代の日本では、国土を統治する天皇が菩薩の資格を有する転輪聖王として殺生を禁ずる発令をしたが、その発令の及ぶ地域が統治を内外に示す意義を有した。一方、香港の道教による水陸儀礼や東南アジアの寺院での死者霊を済度する普度儀礼において放生が行われる例が少なからず見られる。ベトナム・タイ・マレーシア等ではまた寺院周辺において鳥籠より鳥を放して金員を得る民間宗教者が存在する。仏教の民間への普及における、寺院・僧侶以外の私的な宗教者の活動について、日本仏教の場合との比較検討の必要性が今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、コロナウィルスの国内外の蔓延のため、計画していた東南アジア(ベトナム、もしくはタイ地域の調査を計画していた)地域の寺院・僧団組織・仏教儀礼の伝承、及びこれらの民俗化についての調査ができなかった。国内についても、仏教と地域社会の関係を解明するために重要な仏教儀礼の調査は、いずれの寺院も参観を許可しなかった、あるいは厳しい制限をを行ったため、計画を実施できなかった。そのため、調査については国内の寺院と周辺地域の神仏信仰・行事、社会組織、生業・生活との関係性の解明を目的とする聞き取り調査と史資料の調査を推進した。 また、共同研究会についても、分担者の所属大学・機関、いずれもが、コロナウィルス対策のため、機関内での研究会は許されず、このため、on-lineによる、情報共有、討議を実施したが、議論の深まり、資料の共有には、対面での研究会に比べると限界があり、目標とする成果への到達が充分に果たせなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、海外・国内ともに計画通りの調査を実施し、研究を推進した。 第一年目の初年度は、この第一年度の調査テータの分析と、調査地域の過去の関連調査報告、先行研究に基づいて、研究を進めた。しかしながら、当初計画の研究成果を得るには不充分である。 昨年度は、一昨年度に続いて、分担者の所属大学・機関、いずれもがコロナウィルス対策のため、機関内での研究会は許されず、on-line(zoom)による、情報共有を随時、実施したが、討議の深まり、資料の共有には、対面での研究会に比べると限界があり、目標とする成果への到達が充分に果たせなかった。現在、分担者の各大学・機関ともに、対面での研究会を少人数で、換気対策、消毒の徹底等により、許可する方向に舵を切りつつある。 本共同研究について、研究期間の、一年間の延長申請が学振より認められたので、当初計画の通りの調査を進められるよう努める。
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Causes of Carryover |
2021年度は、2020年度に引き続いて、コロナウィルスの国内外の蔓延のため、計画していた東南アジア(ベトナム地域の調査を計画していた)地域の寺院・僧団組織・仏教儀礼の伝承、及びこれらの民俗化についての調査ができなかったため。また、国内についても、仏教と地域社会の関係を解明するために重要な仏教儀礼の調査は、いずれの寺院も参観を許可しなかったため、計画を実施できなかったたため。次年度に、計画している調査、研究を実行するため。
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Research Products
(25 results)