2020 Fiscal Year Research-status Report
ルネサンス期フィレンツェの政治思想--共和国理論とキリスト教の緊張関係
Project/Area Number |
19K00099
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | マキァヴェッリ / ルネサンス / グィッチァルディーニ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究の長期的目標は、イタリア・ルネサンス期の政治思想を構造的に理解し、その特徴を浮き彫りにすることである。この見地から本研究では、マキァヴェッリとグィッチァルディーニという知的巨人の政治理論に焦点を合わせ、前者が開拓した新しい政治学的視座に対するグィッチァルディーニの知的対応を明確化することを目的としている。 2020年度は、本研究の2年目にあたるが、1年目の末で新しい発見があった。それは、フィレンツェ・プラトン主義がこの二人の政治思想に流れ込んでいるということである。当時の政治的文脈を調査してみると、明らかに修道士サヴォナローラの言動が両者に強い影響を与えているが、この修道士の政治的支持者たちの多くは、実のところ、プラトン主義者であった。プラトン主義者たちは、プラトンの哲人王の理念をサヴォナローラやその他の立法者に見出しているのであり、これを脱キリスト教化したのがマキァヴェッリであると考えられる。 このような仮説に基づき2020年度は研究に着手したが、学内行政のコロナ対応に追われており、予定していたほどには論証が進んでいない。しかし、上述の仮説を政治思想学会でおよび九州大学政治研究会で報告し、そこから有益な意見を頂戴することができた。また、共著として教科書『よくわかる政治思想』(ミネルヴァ書房)を公刊することができた。さらに、マキァヴェッリ関連の書評を執筆し、二つの全国紙でのインタビュー記事を掲載することもできた。なお、岩波文庫から出版予定のマキァヴェッリ『ディスコルシ』の翻訳も、第1巻部分が終了しつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述のように、2020年度は学内行政のコロナ対応に追われており、予定していたほどには研究が進んでいない。しかし、2021年度は、新しい対応の負担は減ると見込まれるうえ、学内行政の一つからは自由になるため、本格的に作業に取り組むことができると考えられる。イタリアへの渡航は困難が予想されるが、現在のところ、資料の収集等には大きな問題はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の作業は、サヴォナローラ派の政治的言説を分析することが中心的となる。すでにマキァヴェッリのサヴォナローラ理解については把握しているため、前者が明らかとなれば、両者の関係も明確になると考えられる。 また、マキァヴェッリとグィッチァルディーニの共和国の関係、とりわけ内政面での関係についてはすでに2019年までに分析が終えているため、両者の対外政策の違いが彼らの宗教への態度といかに関わっているか、あるいは、関わりがないのかについて具体的に把握していく予定である。 こうして本研究は、彼らの政治理論の特徴を明らかにし、かつ、共和国理論とキリスト教の緊張関係を明確化できるだろう。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、コロナウィルス感染防止のため、海外渡航はもとより、国内での研究打ち合わせ等ができなかった。翌年度はこれらのために用いる。
|
Research Products
(2 results)