2020 Fiscal Year Research-status Report
フランクフルト学派における戦略的パフォーマティヴィティとメディア性の解明
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19K00101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹峰 義和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20551609)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランクフルト学派 / メディア / パフォーマティヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に主な研究課題としたのは、1。読者にたいするパフォーマティヴな効果という観点から、ベンヤミンの複製技術論文の構成の変遷を解明すること 2.アドルノの音楽演奏論における合理化というモティーフのインターテクスチュアルな関係を分析すること の2点である。結果として明らかになったのは、1. ベンヤミンの複製技術論文が、執筆当初より複数の異なる思想的断片からなるモンタージュ的なテクストとして構想されており、各断章の齟齬をつうじて読者にさらなる思考を促す効果をもっていること 2。「音楽の合理化」をめぐるアドルノの思考が、ウェーバーの合理化論を検証しつつも、合理性を超克する可能性をほかならぬ合理性に求めるという点で異なっていること、そして、そのような合理性への内在的批判がエクリチュールの次元で戦略的に遂行されていることである。 具体的な研究成果としては、1,複製技術論文に関連する遺稿資料をもとに「アウラ」概念と知覚の問題を明らかにしたドイツ語論Die Kraft des Blickes: Zum Motiv des Ansehens /Angesehen- Werdens als Aesthetischer Erfahrung bei Walter Benjamin および日本独文学会で口頭発表された「ミッキーマウスの経験――後期ベンヤミンにおける経験概念」 2.「現代思想」に発表された学術論文「〈音楽の合理化〉の弁証法:ヴェーバーとアドルノの音楽論をめぐって」がそれぞれ挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、コロナ・ウィルスの影響で、予定していたドイツ・フランクフルトのベンヤミン資料館での調査ができなかったが、その代わりに、公刊されている文献資料をもちいて研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
このあともしばらく資料調査ができない状況が続くことが予想されるため、ドイツでの新たな資料収集は諦め、これまで収集した文献資料をもとに、引き続きフランクフルト学派の戦略的パフォーマティヴィティという問題を考察していきたい。また、これまで主な研究対象としてきたベンヤミン、アドルノ、クルーゲにくわえて、ジークフリート・クラカウアーのメディア思想も扱っていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ・ウィルスの影響で、予定していた出張ができなくなったため。
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