2019 Fiscal Year Research-status Report
「モダンダンス」と近代東アジアの文化的・身体的越境
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19K00102
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
イ ヨンスク 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (00232108)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東アジアの近代舞踊 / 越境する身体と文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「モダンダンス」から近代東アジアにおける文化的・身体的越境の様相を多元的・複眼的にとらえることを目的に進めている。そのために、おもに近代日本を代表する舞踊家石井漠(1886―1962)、そして石井漠の門下生である朝鮮の崔承喜(1921-1969)と台湾の蔡瑞月(1921-2005)、三人の舞踊家の芸術活動と足跡に注目し、歴史的・社会的文脈を視野に入れながら、詳細に調べて三人の舞踊家の相応関係に注目をしていく。2019年度は、とりわけ1920年代から1930年代半ばまでを中心に、東アジアにどのように近代舞踊が受容されたかを明らかにすることを中心に研究を進めた。まず朝鮮での伝統的踊りと植民地期に日本を経由して入った近代舞踊との相関関係を考察した。その成果は。2019年12月にHitotsubashi Jornal of Arts and Sciencesn(issn 0073-2788 No.1(Whole Number 60) December 2019)に英語の論文’The Transition of the Monk’s Dance (Sungmu) from Ritual Dance to Folk Art in Modern Korea to 1945’として出版した。また台湾と日本の舞踊に関しての資料調査は、2019年10月30日から11月4日まで台北で開催した<第14回蔡瑞月国際舞踊フェスティバル>にコメンテイターとして参加し、貴重な資料を収集した。蔡瑞月国際舞踊フェスティバルには世界諸国から、舞踊家が参加していたが、日本から参加した石井漠舞踊研究所の方々にインタビューをした。蔡瑞月舞踊研究所では蔡瑞月に関する聞き取り調査と資料を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年4月から2020年3月の間には、東アジアにおける近代舞踊の受容を究明するるための資料収集とこれに関連する国際シンポジウム参加を予定していた。2019年12月まで比較的順調に進んでいたが、新型コロナウイルス感染症拡大のために、2020年2月から3月にかけて資料調査を行うことができなかった。Michigan大学とカナダのThe University of British Columbiaの研究者との共同研究の国際シンポジウムも中止となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年度目である2020年4月から2021年3月までは、東アジアの「モダンダンス」の思想史的背景を考察する。当時の文学史・芸術史との相互関連に焦点をあてる。湯浅克衛、川端康成、村山知義、中野重治の文献を調べてモダンダンスとの関連を究明していく。その中でも植民地出身文学者であり、崔承喜の評伝を書いた湯浅克衛については詳細に調べる。そのほか韓国、台湾、中国における当時の芸術家・評論家の関連資料を収集分析する。これらの研究成果は、新型コロナウイルス感染症拡大が収まれば、2019年度に発表が採択されている二つの国際Conference(ASCJ,10th World Congress of Korean Studies)で発表予定である。引き続き1942年から1945年までの慰問公演と「モダンダンス」の相関関係、芸術と軍国主義の相関関係も考察して行く。実際に慰問公演があった満州、中国地域にて現地調査を行う。それと平行して文献資料も丁寧に調べる。文献資料は復旦大学、上海大学、吉林大学、延辺大学の図書館で資料調査をする予定である。 戦後の東アジアの文化的越境の視点からもモダンダンスの様相を浮き彫りする。この時期に関する研究はたいへん少ない。したがって資料発掘と事実確認に注力する。これら成果は 研究発表として学会に発表するとともに論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ肺炎拡大防止のために、研究活動が制限された。また、予定していた海外研究者との共同研究での国際シンポジウムも中止となり未使用額が生じた。
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Research Products
(5 results)