2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the concept of femininity in biblical exegesis in late antiquity
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19K00103
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐藤 真基子 富山大学, 学術研究部教養教育学系, 教授 (30572078)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アウグスティヌス / 教父 / 女性 / 古代末期 / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度において、当初の計画どおり、古代キリスト教教父アウグスティヌスにおいて、「女性」ないし「女性性」の概念がどのように心性概念と結びつき、その人間論へと展開しているかの分析に取り組んだ。はじめに、アウグスティヌスにおける「感情」の概念を分析した上で、その「理性」との関係が男女間のヒエラルキー構造とどのように関係づけられているかについて明らかにした。この成果は、"Women and Emotion in the Rhetoric of Augustine" と題し、8月にオックスフォード大学で開かれた国際教父学会で発表した。また、「創世記」の楽園神話解釈に基づいて性差の概念を人間の心性概念に結び付けるアウグスティヌスの議論が、4世紀のキリスト教神学者ディデュモスの議論と類似していることについて、ディデュモスの研究者であるPeter Steiger博士と共同研究を行い、6月にハンガリーの中央ヨーロッパ大学で開かれた学会(Dis/embodiment and Im/materiality: Uncovering the Body, Gender and Sexuality in Philosophies of Late Antiquity)で発表後、翌年2月に論文を当学会論文集に投稿した。さらに古代末期における女性概念研究の第一人者でもあるGillian Clarkによる、アウグスティヌス母に焦点を当てた著作の共訳の最終作業にも取り組み、10月に教文館から出版した。また、性差の概念を個々の人間に内在する心性概念に結び付けて論じるアウグスティヌスの楽園神話解釈が、彼の初期著作から後期著作にかけてどのように展開しているかについて、「原罪」の概念に注目して検討した論考をまとめ、「原罪」をテーマとする書籍に寄稿した(2021年度内に出版予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要に記したとおり、当初の予定どおり研究を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画のとおり、2021年度はアウグスティヌスと、彼とほぼ同時代の思想家の著作分析を行うことにより、古代末期に育まれた女性観、人間観の特性を明らかにすることに取り組む。既に昨年度内に、アレクサンドリアのディデュモスとの比較研究を行う中で、アンブロシウスの著作研究に着手できた。この研究を更に深化させていく。また、昨年8月に国際学会で発表した論考"Women and Emotion in the Rhetoric of Augustine"は、学会でも良好な評価を得た上、性差をめぐるヒエラルキー構造についての理解が正義論や聖マリア解釈への発展の可能性もあることについて具体的な見通しを得られた。これらの見通しを反映させつつ、論考を補強し、刊行に向けて取り組む。 2021年度内に研究成果を発表予定であった学会が、新型ウイルスの世界的蔓延の影響により中止や来年度以降への延期が相次いでおり、学会での研究発表や、それに伴う専門家らとの意見交換の機会について見通しが立たなくなっている。また、図書館の閉鎖により資料の利用にも不便が生じている。現況において可能な範囲で研究そのものは遂行しつつ、発表と論文刊行については機会を探りつつ、臨機応変に対応したい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた英語論文添削に対する謝金およびデータベース利用料について、当該年度は代替となる方策を得て経費を削減できたこと等に伴い、残額が生じた。しかし次年度も同様の方策で経費を削減できる見通しはない上、論文の長さに伴い添削料は増加する可能性がある。このため、生じた差額4,614円は、次年度分として請求する助成金と合わせて英語論文添削に対する謝金として使用予定である。
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