2021 Fiscal Year Research-status Report
ソクラテス以前哲学における「神」概念の非譬喩性に関する史的研究
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19K00104
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三浦 要 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20222317)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パルメニデス / デモクリトス / 有るものと思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,まず,昨年度扱ったパルメニデスにおける存在者(実在)と思考の関係について,その「断片」3を中心に補足的検討を行ってパルメニデスにとっての真実在に新プラトン主義的な解釈(「有るもの」=神的理性)を施すことの難しさを考察した。次に,今年度の本来のテーマである「多元論の中でも最も合理的な機械論的原子論において神が語られることの意味」を検討した。特にデモクリトスにおいては,それ自体も原子の複合体である神々は「射影像」と同定され,道徳的性格と知性と人間への関心をもつ有限の存在であって,自然的世界の創造者でも統括者でもないとされており,その点で,デモクリトスは,例えば宗教的変革者であるクセノパネスと比較しても,さらには初期のミレトス派と比較しても,より保守的な宗教観をもっていたと見なされることになる。しかし,射影像自体がデモクリトスにとっての唯一の神的存在と解することには(確かに古代の諸証言はそれを支持するかに見えるが)疑問が残る。クレメンス『雑録集』V88での「デモクリトスは,神的なウーシアー(存在)から人間たちにも理性をもたない動物たちにも射影像が落ちかかってくる,としている」という証言に見られる単数形の「神的存在」は,現象の背後にあってその成立原因の役割を果たすものとみることも可能である。この概念は,デモクリトスの宗教の成立や起源に関する説明における射影像とは明確に区別して検討されるべきであり,さらに言えばレウキッポスが「ロゴス」そして「必然」と呼んだものとこの存在とを関連させることができるなら(それ自体容易なことではないが),そこに原子論者の固有の「神」観を認めることもできるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。当初計画で予定していたいわゆる新イオニア派における神の概念についての考察,とりわけエンペドクレスにおけるそれの考察がいまだ十分になされたとは言えないと思っており,これについては引き続き検討していく必要があると考え,全体としては「おおむね」という評価になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるので,当初の計画通り,プラトンにおけるデーミウールゴスとストア派の自然学における神,そしてそれらとソクラテス以前哲学者の神概念との関係性に関して,文献読解を通じて考察するとともに,研究全体の総括も合わせて行う。
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Causes of Carryover |
当初,資料収集のために国内の出張を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で,移動を自粛し資料収集ができなかったために,次年度使用額が生じた。次年度,国内出張を実施する予定である。
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Remarks |
海外雑誌論文紹介,『古代哲学研究(Methodos)』第53号,p.54,2021年
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