2020 Fiscal Year Research-status Report
明治40年代の文教施策における転換と継承――言語・文学・音楽・歴史・道徳
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19K00108
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鈴木 啓孝 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20803711)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本史 / 思想史 / ナショナリズム / 邦楽 / 唱歌 / 錦絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、東京音楽学校長・湯原元一が作成の総責任者であった『尋常小学唱歌』にまつわる思想史研究を行った。研究開始2年目にあたる本年度の研究実績は、おおむね以下の通りである。 (1)新たな研究主題の獲得:大正期の小学唱歌の調査を進めるうちに江戸期の錦絵との連続(とりわけ各々そのジャンルのひとつである歴史唱歌と歴史絵との連続)という新たな研究主題を得るに至った。 (2)資料収集とその読解:上記の新しい主題で研究を進めるべく、江戸時代後期から明治時代初期にかけて流通した錦絵にまつわる史資料群の入手と調査を進めるとともに、関連研究論文の精読と整理をおこなった。国立国会図書館や東京都立図書館に所蔵されている錦絵の多くはデジタルアーカイブ化されているため、それらを活用した。これとあわせて、明治41年に楽界社が創刊した雑誌『音楽界』大空社復刻版、第1~18巻(第190号まで所収)を入手し、収録論文の精読と整理を開始した。 (3)研究成果の発表:上述の調査をおこなうなかで得られた知見をもとに研究論文「『尋常小学唱歌』のアジア認識―江戸の錦絵から大正の唱歌へ」(メディア史研究会編『メディア史研究』第48号、ゆまに書房、2020年9月30日刊)を公表した。また研究余滴として、長妻三佐雄・植村和秀・昆野伸幸・望月詩史編『ハンドブック近代日本政治思想史―幕末から昭和まで』(ミネルヴァ書房、2021年2月28日刊)所収の記事を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該研究の申請時点ではなかった「錦絵と唱歌の連続」という新たな研究主題を獲得し、それに基づいて論文1報の執筆公表を実現させたものの、これは前年度から本年度初期にかけての成果である。本年度の中盤以降、県外移動自粛のため資料調査と学会発表のどちらとも思うように進められず、また、勤務先の大学における教育業務と管理運営業務に多大な労力を割かざるを得ない状況となってしまったため、当該研究にほぼ手をつけられない状態が続いている。
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Strategy for Future Research Activity |
参照すべき音楽雑誌の入手は終えているので、まずその精読と整理を推進する。具体的には、これらの雑誌に載る膨大な量の記事を根拠に、湯原元一以下、吉丸一昌や高野辰之など『尋常小学唱歌』を編纂した各委員の思惑や、彼らが当時おかれていた状況を各個別々に把握することに努めたい。
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Causes of Carryover |
県外移動の自粛によって資料調査や学会発表で用いる計画だった旅費を使うことができなかった。県外移動が容易にできるようになることを祈りつつ次年度に繰り越す。
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