2022 Fiscal Year Research-status Report
明治40年代の文教施策における転換と継承――言語・文学・音楽・歴史・道徳
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19K00108
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鈴木 啓孝 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20803711)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本史 / 思想史 / ナショナリズム / 邦楽 / 唱歌 / 錦絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに引き続き、大正期に完成した『尋常小学唱歌』にまつわる思想史研究として、東京音楽学校校長兼小学唱歌教科書編纂委員長として編纂の総責任者の地位にあった湯原元一の所論分析を進め、これまで研究史においてほとんど検討されてこなかった『尋常小学唱歌』編纂の社会史的背景を明らかにした。その成果を公表するとともに、韓国で開催された国際シンポジウムへの招待にあわせて、資料調査の過程で得られた知見から派生した関連する主題での研究結果を発表した。開始4年目にあたる本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)研究成果の口頭発表:2022年6月4日に開催された熊本史学会2022年度春季研究発表大会で「『尋常小学唱歌』編纂と旧制五高―湯原元一の所論分析を通して」と題した学会発表、2023年3月21日に開催された青森中央学院大学北原研究室主催研究会で「湯原元一謹述『戊申詔書釈義』考 ―『尋常小学唱歌』編纂の前提」と題した研究報告をおこなった。 (2)論文の執筆と公表:研究論文「『尋常小学唱歌』編纂の思想的背景―東京音楽学校校長・湯原元一の論説を中心に」(熊本大学大学院人文社会科学研究部編『人文科学論叢』第4号、2023年3月31日刊)を公表した。 (3)国際シンポジウムでの口頭発表と共著書の刊行:2022年6月24日に韓国・釜山市で開催された東義大学校東アジア研究所主催の第18回国際学術シンポジウム「日本のなかのマイノリティの時代史的表象」に参加し、「二項対立の陷穽―アイヌをめぐる歴史認識と「サイレント・アイヌ」を焦点に」(原文韓国語)と題した研究報告をおこなった。後、同シンポジウムがもとになった共著書『日本のなかのマイノリティの時代史的表象―東アジア研究叢書 第9巻』(博文社、2023年2月28日刊、原文韓国語)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型ウイルス蔓延下の活動自粛が徐々に解禁となったことに伴い、当該年度の成果として、国内研究会での報告を2回、韓国で開催された国際シンポジウムでの報告を1回おこなうともに、年度末に査読論文1本の公表と共著書1冊の刊行を実現できた。前年度までの研究の停滞状況からある程度は挽回できたが、当初の予定からはいまだ遅延した状況にあり、研究期間を1年延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長し次が最終年度となるため、前年度に記載した通り、当該研究の集大成として単行本の執筆と公刊が実現できるよう尽力する。
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Causes of Carryover |
前年度まで、県外移動の自粛期間が長く、資料調査や学会発表で用いる計画だった旅費を使うことができなかったことに連動し、物品費や人件費の支出もおさえられ、当該年度に繰り越された分が残金となった。 また、当該年度においては、適当な者がおらず学生アルバイトを雇用しなかったため、人件費が残金となった。
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