2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on "Suwa-ryu Shinto" in the History of Buddhist-Shinto Interactions of Medieval Suwa
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19K00110
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
岩澤 知子 麗澤大学, 国際学部, 教授 (60748375)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 諏訪流神道 / カミ信仰 / 神仏習合 / 密教 / 即位灌頂 / 胎生思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中世諏訪の神仏習合思想から生み出された「諏訪流神道」の形成過程および構造の分析を通して、諏訪古来のカミ信仰が、古代律令制により導入された神祇制度、さらに中世における仏教との交渉を通して、いかに多義的な神の姿を創出するに至ったか、その豊かな歴史性や多様性を明らかにすることである。 諏訪祭政体には、古代より「神長」と「大祝」による「双分的首長制」が存在していたことが知られているが、これは諏訪古来の「カミ信仰」と、ヤマト朝廷によって確立された「神祇制度」との重層性を象徴するものと考えられる。本研究ではまず、この「双分的首長制」が歴史的にどのように形成され、中世諏訪の「諏訪流神道」を生み出すかに至ったかの分析を試み、その成果を、論文 "Buddhist-Shinto syncretization at the medieval Suwa Shrine" と題して、2020年度刊行の英文図書 Exploring Shinto (共著、Springer, 2020年8月) の中で公表した。 今年度はさらに、その「諏訪流神道」の内実に迫るべく、神長・守矢満実が著した『諏訪大明神深秘御本事大事』の解読に注力した。そこに示された「大祝の即位儀礼」の構造分析を進めるうえで、中世伊勢で行われていた様々な神道灌頂の影響が見出されることがわかり、これら灌頂儀礼との比較分析のもと、考察を進めた。 この「大祝の即位灌頂」の実相を解明していくうえで、諏訪流神道と密教とがいかに関わっていたかを分析することが欠かせない。今年度より、研究協力者として、中世後期以降、信濃における真言宗の灌頂道場・談義所であった佛法紹隆寺(諏訪市)の現住職・岩崎宥全氏に研究に加わっていただき、密教との関連性に着目しながら、中世諏訪における即位灌頂儀礼の実相(密教的胎生思想を含む)を解明することに全力をあげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は順調に進展しているが、今年度に勃発した新型コロナウィルスのパンデミックの影響により、出席を計画していた国際学会が中止となり、研究成果を口頭発表することができず、その成果の執筆にも十分に従事することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、諏訪流神道における「即位灌頂儀礼」の実相解明に向けて、密教との関連性に焦点をあてながら、史料分析をさらに進めていく。この史料解読・分析にあたっては、中世後期以降、信濃における真言宗の灌頂道場・談義所であった佛法紹隆寺(諏訪市)の現住職・岩崎宥全氏、さらに地元の研究者として諏訪信仰の儀礼分析に長年携わってこられた田中基氏(スワニミズム研究会会員)の協力を得ながら考察を深めていく。またこの研究成果は、2021年8月に(オンラインにより)開催される European Association for Japanese Studies 国際会議で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、ベルギーのヘントで開催される European Association for Japanese Studies 国際会議 (8月)と、アメリカのボストンで開催される American Academy of Religion 年次大会 (11月)に参加する予定であったが、新型コロナウィルス拡大の影響で、その計画が中止もしくはオンライン開催となったため、当初予算(海外渡航費用として予算計上)と比べて、未使用分が多くなった。 次年度にはできるだけ未使用分を物品費(研究関係の図書)および国内旅費(フィールドワークや研究会)に使用したいが、残りの交付額に関しては、次々年度に繰り越したく、そのために補助事業期間延長承認申請書を提出する予定である。
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Research Products
(1 results)