2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00112
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
菱刈 晃夫 国士舘大学, 文学部, 教授 (50338290)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 悔い改め / 疚しい良心 / 覚醒 / 自然法 / 自然の光 / 神の教育 / フランケ / カント |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのメランヒトン「カテキズム」に関する研究を総括した。メランヒトンのカテキズムを振り返り、その本質的特徴を再確認すると共に、1548 年のカテキズムにあらわれる人間観をおさえ、さらに彼の作品を、より分かりやすく、より簡潔に展開した、当時の著作(ヴァリエーション)を簡単に取り上げることで、「カテキズム」の全体的特性を浮き彫りにした。あわせて発展的に、敬虔主義者フランケの小品の翻訳と研究も行った。 ルターによる宗教改革の進展に伴い、またカテキズムによる教育も盛んとなるが、同じルターの教えに忠実であるとした人々の間でさえ、当時の嵐のような社会的激変の中で、その教説にもさまざまな変異が生じていた。すでに見たアグリコラに端を発する反律法論争への対応からも、メランヒトンは、現実的な社会の安定や、カトリック教会に代わる教育制度の土台を、ヒューマニズムによりながら再構築する必要に迫られていた。その具体的な成果として、数々のカテキズムが成立することになった。それらの本質的特徴とは、あくまでも信仰のみによるルター神学を基としながら、律法もしくは法による良心の覚醒と悔い改めを開始点として、人間の心の純化と再生を、そして社会の改善を実現しようとするところにある。これは、実のところ人間の手には負えない、神の教育の範疇にある。が、メランヒトンが究極的な関心を寄せて問題としているのは、こうした心の内奥の変容にある。と同時に、もともとメランヒトンは人文主義者である。法による良心の覚醒とはいっても、その法そのものは、自然法としての人間本性に生まれつき刻印されているはずのもの、とメランヒトンには捉えられていた。ゆえに、ここに教育への希望と可能性が拓かれることを明確化した。それは後のフランケなど敬虔主義、さらにはカントの教育思想にも受け継がれていくことになる。
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Research Products
(2 results)