2020 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Analysis of Auguste Comte's "Cours de la philosophie positive"
Project/Area Number |
19K00116
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安孫子 信 法政大学, 文学部, 教授 (70212537)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 隆司 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (80509042)
村松 正隆 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (70348168)
松井 久 法政大学, その他部局等, 講師 (60834843)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | オーギュスト・コント / 実証哲学講義 / 実証主義 / 科学史 / 科学哲学史 / ニュートン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍のもたらす混乱状況に、国内共同研究者それぞれは、自身の本務における問題対応に追われることとなり、年度初には、課題研究当初から継続させてきていたレギュラーの課題研究会も中断せざるをえないことになった。ただ、オンライン・リモートでの研究会を徐々に軌道に乗せることが出来、夏前くらいからは、従来の隔週での研究会をほぼ休みなく実施していくことができた。そこでは課題研究の基礎作業であるオーギュスト・コント『実証哲学講義』の翻訳作業を、訳文の完成だけではなく、そこで扱われている諸科学の哲学の、科学史的・哲学史的意義の解明とともに行っていった。その結果、『講義』の大きく二つの部分―「自然科学篇」と「社会科学篇」―の前半、前者については、ほぼ訳文の完成を近日に見込めるほどまでに作業を進捗させることができた。加えて、同じくその部分に関する、科学史的・哲学史的意義の解明においても、特に共同研究者の一人の研究の賜物であるが、若きコントのエコール・ポリテクニクス学生時代の授業聴講ノート、また、やはり若きコントが聴講していた可能性も取りざたされる当時のモンペリエ大学医学部教員の講義ノート、これらノートの読解を進めることが出来、天文学や物理学においてばかりではなく生物学や医学においても圧倒的支配力を揮っていたニュートン主義がすでに揺らぎはじめていた当時の状況が確認され、加えて、それが若きコントに影響して、彼の実証哲学の構想自身が、ニュートン主義からの一定の距離を置く方向で固められて行った可能性をも垣間見ることが出来たのは、非常に大きな成果であったと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のもたらす混乱状況に、国内共同研究者それぞれが、年度当初は、自身の本務における問題対応に追われることとなり、共同研究に出遅れが生じ、当初は、並行して進める予定であった、研究課題文献(コント『実証哲学講義』)の二つの部分(自然科学篇と社会科学篇)の後者について、年間全体で、文献の翻訳、および、その科学史的・哲学史的意義の検討の両面で、遅れを生じさせることとなった。加えて、これも年度当初は予定していた、国外研究協力者(主にフランスの研究者)との共同での研究会(ワークショップ)はオンラインでの実施も含めて、それぞれがコロナ対応に忙殺される中、断念されることとなった。この研究の国際協力は、とくに、課題文献の科学史的・哲学史的意義の検討と評価ということでは不可欠であって、内輪で確認できた成果を、ひろく外の目に依っても確認し確証していく好機を失う結果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の状況が必ずしも改善されているわけではないが、この中で、オンライン・リモートでの研究会やワークショップの実施について、共同研究者たちにも経験の蓄積が生じて来ており、それをさらに生かして、共同作業をよりスムーズに行っていけるように図りたい。そのことで、研究の遅れを取り戻すことができればと考える。そして国外の研究協力者たちとの共同作業についても、もちろん対面で密な議論を行えるような状況の改善を祈りつつも、今年度については、場合によっては、オンライン・リモートでも、必ずワークショップを実施し、研究成果の検証を、広く国際的な視線の下で行えるようにしていきたいと考えている。実際、海外から研究者を当地に招く場合には予算上の制約を受けざるを得ないのが、オンライン・リモートでの場合はその制約がなく、ある意味で、何人でも招聘できるわけで、その実施形態がどうなろうとも、いずれにしても、積極的な国際的共同作業が本年度は実現するよう努めたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で海外研究者を招聘しての課題研究のワークショップを開催することが出来なかった。主にその予算分が未使用に終わったので、コロナ禍も終息しワークショップ開催も可能となることを見越して、その額を次年度に繰越すこととなった。
|