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2019 Fiscal Year Research-status Report

ペラギウス派神学思想の相互影響・発達史的観点による伝承史的・教会政治史的総合研究

Research Project

Project/Area Number 19K00125
Research InstitutionNanzan University

Principal Investigator

山田 望  南山大学, 総合政策学部, 教授 (70279967)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2024-03-31
Keywordsペラギウス / ペラギウス派 / 東方神学 / アンティオケイア学派 / クリュソストモス / ユリアヌス / 神化思想 / 女性観
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、ペラギウス派の神学思想を、伝承史的に解明される基本伝承を根幹に据えつつも、その神学思想全体については、相互影響史的、発達史的観点の導入により、その都度新たな思想要素を取り込みながら展開されていった動的な思想的流れとして解明することを目的とする。今年度は、P. F. Beatriceによる『罪の遺伝』(1978年、2013年)、M. LamberigtsやA. Duponによる一連の肯定的なペラギウス研究の成果、そして、Ali Bonnerによる『ペラギウス主義という神話』(2018年)などの最新の先行研究を踏まえ、とりわけ、昨年度までの研究をさらに深化発展させ、東方アンティオケイア伝承の代表的教父であるクリュソストモスの文書において、ペラギウス派との如何なる類似性が伺えるかについて、特に伝承史的、相互影響史的観点からの解明に取り組んだ。分けても、ペラギウスによる複数の女性たちに対する文書の中に、神人の協働、個性化としての神化、アパセイアなどの東方的神化思想の特徴がどのように展開されているのかに関して集中的考察を行い、続いてクリュソストモスの文書における女性の神化に関する内容との対比・検証を通して、ペラギウスの勧告内容が東方的神化思想とほぼ同じ構造を有することを確認した。さらに、ペラギウスの弟子ユリアヌスの、女性の陣痛に関する理解と、クリュソストモスならびにアウグスティヌスによる陣痛解釈とを比較対照することにより、クリュソストモスの陣痛理解はアウグスティヌスではなく、ユリアヌスの理解により近いことを検証した。さらに、女性キリスト者のアスケーシスの理解や訓練を徳の実践と位置づけ、その実践の報いが期待されるという点で、ペラギウス派とクリュソストモスとが共通していること、両者が共に、アスケーシス理解を社会的弱者や孤児の救済・救貧活動の実践と結び付けていたことを確認した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

全体で5年の研究計画を有する本研究の、2019年度の進捗状況は、概ね予定通りに進んでいる。2019年8月19日~24日には、4年に一度Oxford大学において開催される、The Eighteenth International Patristics Conference Oxfordに参加し、21日午前中のペラギウス派セッションに於いて、ユリアヌス、アウグスティヌス、そしてクリュソストモスによる、女性の陣痛解釈を比較する研究発表(発表題:Pelagians’ and Chrysostom’s Similar Ascetic Counsel to Christian Women)を行い、発表後にも活発な議論が交わされ、研究の成果に関する高い評価を得た。また、11月9日~10日に聖心女子大学にて開催された中世哲学会に参加し、昨年度までの原罪論に関するシンポジウムを行ったメンバーと共に、著書の出版についての打ち合わせを行った。メンバーとの一連の出版構想により、2020年度の刊行を目指して、『「原罪論」で紡ぐキリスト教思想』と題する著書の、拙論「ペラギウス派による原罪論批判の本質と女性観を巡る課題」にシンポジウム以降の最新の研究成果を盛り込むこととし、ペラギウス派による女性信徒の霊的神化の構造とそれに纏わる影響史的観点からの研究成果を大幅に加筆した。また、本研究の特色の一つでもある考古学的学際的研究の一環として、2019年11月11日~12月7日に南山大学人類学博物館にて、南山大学図書館との共催で「(特別展)カタコンベ研究の世界」が開催され、その最終日の共同シンポジウムにおいて、西南学院大学の山田順准教授によるローマ市内でのキリスト教救貧施設と目される遺跡内で出土した壁画とペラギウス派によるローマ市での救貧活動との関連性に関する発表コメントを行い、多大な反響を得た。

Strategy for Future Research Activity

2019年度は、ペラギウス派神人学の特徴を伝承史的に位置づける作業が中心となり、特に昨年度までの研究成果の継続として、東方アンティオケイア伝承を代表するヨアンネス・クリュソストモスの神化思想との比較検証を行った。今後は、同じくアンティオケイア伝承に属するモプスエスティアのテオドロスや、さらに東方神学の中でもカッパドキア三教父の一人として知られるバシレイオスの神学思想との伝承史的、相互影響史的研究へと移行していく。また、アウグスティヌスとの関連では、北アフリカで生じたドナトゥス派論争と、その後に生じたペラギウス論争との相互影響史的、発達史的観点からの研究を行う予定である。また、現時点では、新型コロナウイルスの影響により、イタリア・ローマでの実地調査は極めて困難であるが、今後、状況が許すようになり次第、ローマ市内で発掘・調査が進んでいる4-5世紀のキリスト教救貧施設やそれらの壁画内容と、ペラギウス派によるローマ市内での救貧活動の実態との関連についても、現地調査も含めた検証を進めていく予定である。

Causes of Carryover

新型コロナウイルスによる影響により、整理用ファイルフォルダーを発注したものの、原材料等を中国から調達しており、製品の出荷ができないということで発注を取り消したため、6399円分が執行できなかった。次年度に繰り越して、速やかに執行する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2020 2019

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] Pelagius’ View of Ideal Christian Women in his Letters Critical Perspectives of Recent Pelagian Studies Comparing Chrysostom’s View in his Letter to Olympias2020

    • Author(s)
      Nozomu Yamada
    • Journal Title

      Scrinium, Journal of Patrology and Critical Hagiography

      Volume: 16 Pages: -

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Pelagians’ and Chrysostom’s Similar Ascetic Counsel to Christian Women2019

    • Author(s)
      Nozomu Yamada
    • Organizer
      The Eighteenth International Patristics Conference in Oxford
    • Int'l Joint Research
  • [Book] 『「原罪論」で紡ぐキリスト教思想』2020

    • Author(s)
      山田 望
    • Total Pages
      ー
    • Publisher
      知泉書館

URL: 

Published: 2021-01-27  

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