2019 Fiscal Year Research-status Report
無声映画期の欧米諸国におけるアジア映画の上映およびアジア映画人の活動に関する研究
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19K00128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
韓 燕麗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10537096)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 映画史 / アジア映画人 / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
ハリウッドをはじめとする欧米諸国の無声映画に描かれる国籍不明な「東洋人」イメージに対して、日本も中国も20世紀初頭から国辱としてずっと抗議しつづけていた。当時の映画人も、いかに自国産の映画をもって欧米の歪んだ認識を是正しようと議論しつつ、映画作品の中でそれを実践しつづけた。アジア映画はその最初期から欧米からの視線を強く意識しながら発展してきたものだと言えよう。しかし映画を利用した文化的発信は欧米諸国において、実際どのように受容され、そしていかなる効果があったのか、いまだ不明瞭なままのところが多い。本研究はこれまで充分に踏査されてこなかったヨーロッパ諸国におけるアジア映画の受容の実態およびアジア映画人の活動について、実態調査と分析を行うことを目的としている。 今年度は、文献資料と映像資料の収集に努めた。2019年11月に約8日間、フランスの国立映画アーカイブ、国立図書館およびリヨンのリュミエール映画資料館へ資料を調査してきた。その過程で、フランスの各大学で1920年代までの初期映画を中心に研究する研究グループともつながりができ、今後フランスを中心に、ヨーロッパの他の地域にも調査に出かけようと考えている。 ヨーロッパ地域ではないが、無声映画期のタイにおける中国系移民の映画製作について、研究成果をまとめて論文を書き上げた。査読を経て北京大学から出版される『芸術評論』の第四号に掲載される予定である。 資料調査や論文執筆と平行し、2019年4月に北京師範大学にて、7月に法政大学にて国際シンポジウムや書評会に参加し、各国の映画研究者と積極的に意見交換や議論を重ねてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、文献資料と映像資料の収集に努め、順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は下記の三つの方面から研究を推進する予定である。 ①映画フィルムの発掘調査:ヨーロッパ各地のフィルム・アーカイブと国家図書館へ調査に赴き、アジア映画が上映されていた地域の公文書館やローカルアーカイブへ積極的に現地から情報収集を行う。 ②映画雑誌などの文字資料の調査:映像資料を収集すると同時に、各大学の資料館や政府公文書館で同時期の雑誌や新聞などの紙媒体のメディアに掲載される映画評論なども網羅的に収集・調査・分析する。 ③途中までの調査結果を整理しつつ、研究成果をまとめ始める:調査結果について分析すると同時に、積極的に日本国内外の映画研究者と意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
当初は2020年3月、春休みの期間中にもう一度ヨーロッパ方面へ調査に出かける予定だったが、コロナウィルスの世界的蔓延の影響で、断念せざるを得なかった。 状況が終息したのち、またあらためて計画を立てて、調査に出かける予定である。なお2020年4月現在、2020年8月にドイツで開かれる国際学会で発表することを申し込んでおり、審査も無事に通っている。学会は延期ないし中止しない限り、夏休みに発表と調査に出かける予定である。
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Research Products
(3 results)