2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00130
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
濱崎 友絵 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (90535733)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 音楽伝承 / トルコ系移民と音楽 / ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ディアスポラ下にあるトルコ系移民の民俗音楽伝承がいかなる形で成立しているのかをフィールドワークを軸とした実証研究によって明示することである。2022年度においては、コロナ禍によって延期していた現地調査が実施できたことから、ドイツおよび比較対象地としてオランダにおけるトルコ系移民の音楽学校において聞き取り調査をおこなった。ドイツにおいては、ケルン市を中心にトルコ音楽教育機関を網羅的に整理したSeckin(2018)の成果を手掛かりに、とくにトルコ民俗音楽教育に力を入れている、ケルンのアナトリア芸術センター(ASM)においてバーラマ(トルコの撥弦楽器)教員を中心にインタビューを実施した。またオランダにおいては、オランダ初のトルコ音楽教育機関Sanatoliaのセンター長らにインタビューなどを実施することで、楽譜に基づく音楽教育システムの展開とともに、移民世代間のトルコ文化・音楽理解の格差、民謡に付随する祖国の歴史や「なつかしさ」といった感情との接合など、「伝承」にともなう数多くの問題・課題が明らかとなった。 上記については2023年度も現地調査を引き続きおこない、成果をまとめていく予定である。なお2022年度における関連する成果としては、シンポジウム・パネリストとしての発表(「トルコ共和国と民俗音楽」、京都大学)や学会発表(「A. A.サイグンのトルコ民俗音楽研究――バルトークとの交差を射程に」、日本音楽学会第73回全国大会)、事典項目執筆(「地域ごとの音楽(トルコ)」他、イスラーム文化事典編集委員会編『イスラーム文化事典』丸善出版社、2023年1月)などが挙げられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は各所にインタビューなどを含め現地調査をおこなえたことで、研究の推進を図ることができた。しかしながらこれまでのコロナ禍のため、フィールド調査の催行を見合わさざるを得なかったことから、当初の計画全体の進捗に関してはやや遅れている状況となっている。2023年度においては現地調査が可能な状況となったことから、音楽学的観点からの研究の方法論や分析フレームの検討や主に二次資料の収集・検証なども含めて研究の推進を図る。
|
Strategy for Future Research Activity |
23年度においても、引き続き研究の方法論とフレームワークの妥当性について検討を進めつつ、音楽伝承にかかわる視点を拡張・展開するため、ドイツのみならず、オランダ等、他のヨーロッパ諸国の事例にも目を向け現地調査をおこなう予定である。とくに今年度の調査では教育機関に通う一般の参加者(とくにトルコ系移民の第3、第4世代)にインタビューを実施する計画である。同時に音楽学をはじめ、社会学や文化人類学領域の成果を参照することで分析フレームの検証を進めつつ、比較対象として日本における民俗音楽伝承のメカニズムも視野に入れ考察を進めていく。
|
Causes of Carryover |
(理由)当初計画していた現地調査を実施することができなかったため、未使用額が生じることになった。 (使用計画)未使用額については、文献資料の収集および現地調査による予算執行を予定している。
|
Research Products
(2 results)