2019 Fiscal Year Research-status Report
高木東六日記研究─1930年前後のパリにおける日本人の音楽留学と人的交流の実相─
Project/Area Number |
19K00134
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤井 浩基 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (50322219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高木東六 / 留学 / パリ / 東京音楽学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,昭和から平成にかけて活躍した音楽家の高木東六(1904-2006)が1927年から1931年にかけて書き留めていた自筆の日記全5冊(約1000頁)の翻刻と解題を行うものである。高木は1928年~1932年にパリに留学し,同地の音楽院スコラ・カントルムでピアノと作曲を学んだ。日記は留学に至る過程から留学生活の終盤まで克明に記述されている。 翻刻は,5冊のうち最初の「大正16年日記」を中心に作業を行った。「大正16年日記」大正から昭和へと元号が変わって1週間後の1927年1月1日から同年11月22日まで,241頁にわたって記述されている。実質的には昭和2年の日記である。高木の東京音楽学校在学時代に当たり,記述の中心は同校での学生生活である。特に同年の後半から,学生による同校校長の排斥運動に関する記述が増えてくる。結局,この運動に加わったことが原因で,翌1928年に高木は同校の退学を余儀なくされ,パリ留学を志すことになる。校長排斥運動は複数の主要紙でも報道されたが,日記には高木が新聞の担当で,新聞記者への対応や情報提供を行ったこと等が記されている。翻刻の作業と並行して,校長排斥運動に関する新聞記事を収集し,高木の記述と照合し,事実関係を整理した。続いて「昭和3年日記」もパリ留学前の記述が中心で翻刻作業を進めつつある。 2019年6月にはフランス国立公文書館他で,高木のパリ留学期及びその前後における同地の音楽事情,日本人の音楽留学事情に関する資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
万年筆による高木の手書きで判読が難しい筆跡が多数あり,翻刻作業に予想以上の時間を要した。また,所属学会での成果公開(口頭発表)を模索したが,先に着手していた別の研究の発表を優先して行う必要があったため,年度内での発表が実現しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
手書きの判読にも慣れてきたことから,翻刻作業のペースを上げていきたい。日記に頻出する人物名については,日記の記述のみではどのような人物かという情報が不足している。そのため,他の資料から補完して記述の脈絡をさぐる必要がある。
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Causes of Carryover |
年度末に資料収集及び成果公開を計画していたが,新型コロナ感染拡大の影響により,所属機関で出張自粛要請が出たため,次年度使用額が生じることとなった。新型コロナ感染拡大が収束すれば,上述の計画の実施に充当したい。
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