2022 Fiscal Year Research-status Report
高木東六日記研究─1930年前後のパリにおける日本人の音楽留学と人的交流の実相─
Project/Area Number |
19K00134
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤井 浩基 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (50322219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高木東六 / 日記 / パリ / 留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
5冊の日記のうち最後となる「昭和6年自由日記」を中心に翻刻・解題作業を行った。「昭和6年自由日記」は,高木東六本人が一旦書いた記述を黒いインクで塗りつぶしたり,頁を切り取ったり,特定の行を切り抜いたりしている箇所が多数ある。そのため,記述の前後の脈絡がつかめない内容が他の日記より多く,翻刻,解題とも苦慮した。1985年に高木が講談社より出版した自伝『愛の夜想曲』の記述の他,雑誌への寄稿等と照合し,空白となった箇所を補いつつ,パリ留学最終盤の状況を把握しようと試みた。 高木が他の日本人留学生とどのような交流があったかについては,美術の分野の人的ネットワークが強いことが確認できた。中でも,同時期にパリに留学していた画家の吉井淳二との交遊が,記述の中に頻出する。鹿児島県南さつま市にある吉井淳二美術館より資料・情報の提供を受け『吉井淳二 画帖の栞』他から高木と吉井の交遊を裏付けた。 これまでの研究成果の公開として,2022年9月3日(土)に聖徳大学で開催された音楽学習学会第18回研究発表大会で,「高木東六のパリ留学日記―翻刻作業からみえてくる音楽家の実相―」と題した口頭発表を行った。 翻刻作業自体はほぼ終了し,判別ができなかった手書き文字や,現地における人名,地名,施設名の再調査,再検討に取りかかっている。 2024年は高木の生誕120年に当たる。その節目に本研究の成果をまとめ発表することで,高木の再評価につなげたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による各種制限の緩和にともない,遅滞していた作業を挽回することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の仕上げの段階に入っており,成果公開の具体的な準備を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で,高齢の情報提供者への聞き取り調査を控えたことにより,そのための旅費や謝金の支出がなかった。成果公開を視野に本研究を仕上げるため,前年度までにできなかった作業に関する支出を計画している。
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