2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00136
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
齋藤 桂 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 講師 (20582852)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 股旅 / 都市文化 / 農村文化 / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当該芸能の現地調査を行うことはできず、文献の収集・精読による手法を中心に研究を行った。 文献では特に、明治期から昭和初期にかけての創作におけるやくざ者の描かれ方と、実際のアウトローの行動とについての調査を行い、創作にどのような理想が託されたかについて検討を行った。 また、股旅ものを都市文化と地方文化との葛藤としてとらえることで、都市からのエキゾチシズムが投影された地方文化、という構図が、本土と満州と相似関係にあることに着目し、研究を進めている。 また、エキゾチシズムの反映の別の例として、しばしば股旅舞踊とセットで踊られるマドロスもの(船員の恰好をして、波止場を舞台に舞われる舞踊)にも着目し、そのルーツと展開について、文献を中心に調査を進めているところである。大衆演劇の定番である股旅ものとは異なり、マドロスものは演劇で扱われることは少なく、その差異にも着目している。 論文としては、同時代の音響的・音楽的コンテクストを明らかにするために、近代の音響にかかわるエッセイの嚆矢である鈴木鼓村『耳の趣味』(1913)を分析し、そこにみられる俳諧や民俗学からの影響を指摘した。この民俗学的関心の浸透は、股旅ものが、都会ではなく、地方都市や農村を舞台に展開されたことを考える上でも重要な示唆を与えるものであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べた通り、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、イベントの中止や移動の制限などが生じ、本研究計画が当初予定していた、現代の股旅もの芸能についての調査が進んでいないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、これまで後回しになっていた現行の股旅ものの芸能についての調査を行うことで、これまで進めてきた芸能史研究との接続を試みたい。再開されない場合は、インターネットなどを活用して資料収集に努めて、その不備を補う予定である。 また、股旅ものの隣接分野である、任侠ものやマドロスものなどについても調査を深めることで、多面的なコンテクストから本研究を立体化したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、調査対象となるイベントなどが中止、また移動・渡航が制限されたために使途が限られたことによる。今年度は、イベント等の再開を期待しており、有効に使用することができるものと考えている。
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Research Products
(1 results)