2020 Fiscal Year Research-status Report
Correspondence and Collaboration Between Japanese and European Surrealists: A Study of the Letters of Shuzo Takiguchi and Joan Miro
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19K00147
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Research Institution | The Museum of Modern Art, Kamakura and Hayama |
Principal Investigator |
朝木 由香 神奈川県立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50450797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 裕之 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (10265944)
朝吹 亮二 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 名誉教授 (70159383)
松田 健児 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (70548255)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シュルレアリスム / 瀧口修造 / ジュアン・ミロ / 山中散生 / 風車詩社 / ジョセフ・コーネル / ジュアン・プラッツ / ジュゼップ・リュレンス・アルティガス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀前半、フランスで生まれた前衛思潮であるシュルレアリスムを、戦前、日本での受容において主導的な役割を担った瀧口修造が、戦中の挫折を経て、戦後、いかなる道筋を辿ったのかを、ジュアン・ミロとの交流を中心に検証するものである。 2020年度前期は前年度に引き続き、本研究活動の目的である「ジュアン・ミロと瀧口修造の往復書簡資料集」の刊行準備、具体的には書簡の翻刻、和訳、さらに註釈作業を進めた。その過程で、ミロの周辺にいるカタルーニャ文化圏の詩人、作家、文化人(ジョアン・ブロッサ、ジュゼップ・リュレンス・アルティガス、ジュアン・プラッツ)と瀧口との交流にも目を向けた。これらの資料の関連諸機関と連絡をとり、瀧口との交流を示す新たな書簡の所在情報を得たことは、本研究の内容を充実化させた。 さらに、ミロと瀧口の関係をより広義にカタルーニャ文化と日本の関係から探った。2019年度、本研究メンバーが関わった「奇蹟の芸術都市バルセロナ」展で発表したカタルーニャにおけるジャポニスムやモダニズムに関する研究は、とりわけ日本への関心が深かったミロの美術が生まれる背景を考える一助となった。 後期は、下記の進捗状況に記すように研究活動に遅延が生じたため、共同調査に代わる個人研究を進めた。ジョセフ・コーネルと瀧口の関係や民藝とカタルーニャ文化の関係、戦前、台湾の前衛詩運動「風車詩社」などを調査研究することは、本研究の今後の方向性に新たな視点をもたらすことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響により、本研究の計画が遅延したため今後について、予定の変更を検討している。遅延の事由は次の通りである。①研究メンバーの所属機関(美術館、大学)の方針(休館や大学閉校)により、定期的な研究会および大学内の施設(図書館、アーカイヴ)での共同調査が困難となった。②本活動が基本としてきた国内外の各諸機関での実地調査が困難になった。③本研究の海外の研究協力者の一人であるリカル・ブル氏が、2020年度、急遽、帰国したため協力を得ることが難しくなった。 上記の状況から、本研究の課題に準じた個人研究を進めることにした。具体的には、ジュアン・ミロと瀧口修造に関する周辺作家や運動なども対象に入れ、各自が論考の執筆などを進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗や、新型コロナウィルス感染症の状況をもとに、本研究の計画を繰越し延長することを見据え、具体的に次のような推進方策を検討している。 ①書簡資料集の刊行:本研究の成果目標であるジュアン・ミロと瀧口修造の書簡集の刊行について、出版方法、時期、本の仕様、内容を、作業の実現性から見直した結果、基本的な資料集を目指すこととし、2021年度内に編集を終え、2022年度に刊行する方向である。 ②ミロと瀧口の交流に限定せず、より広い視点から日欧のシュルレアリスム運動を検証することで本研究の課題である、戦前、戦後の繋がりを検証する。ミロの周辺作家と民藝の関係や、戦前、戦後における日本とマン・レイとの関係について調査を進める。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた国内外での調査出張をはじめ、研究会の開催が新型コロナ感染症の影響により実現できなかったため、2021年度には、一部、予定を変更しながら活動の再開を目指す。具体的には、マヨルカ・ミロ財団や国内諸機関での調査、書簡集刊行に伴う著作権使用料費に使用することを検討している。
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Research Products
(11 results)