2022 Fiscal Year Research-status Report
Correspondence and Collaboration Between Japanese and European Surrealists: A Study of the Letters of Shuzo Takiguchi and Joan Miro
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19K00147
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Research Institution | The Museum of Modern Art, Kamakura and Hayama |
Principal Investigator |
朝木 由香 神奈川県立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50450797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 裕之 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (10265944)
朝吹 亮二 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 名誉教授 (70159383)
松田 健児 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (70548255)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 瀧口修造 / ジュアン・ミロ / マン・レイ / ローランド・ペンローズ / 山中散生 / 宮脇愛子 / エウダル・セラ / 海外超現実主義作品展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀前半、フランスで生まれた前衛思想であるシュルレアリスムを、戦前、日本での受容において主導的な役割を担った瀧口修造が、戦中の思想統制による挫折を経て、戦後、いかなる道筋を辿ったのかを、ジュアン・ミロとの交流を中心に検証するものである。 コロナにより海外調査に問題が生じたため、当該年度は下記の活動に注力した。 1)日本におけるマン・レイの受容研究:研究代表者(朝木)は、所属機関(神奈川県立近代美術館)で「マン・レイと女性たち」展を担当し、特集「マン・レイと日本」展を企画、同展の冊子を刊行した。1937年、日欧シュルレアリストが協力して開催した「海外超現実主義作品展」に注目し、海外から送られた書簡資料に加え、新資料として①山中散生差出、ローランド・ペンローズ宛の同展会場写真(2種)、②瀧口差出、ペンローズ宛書簡(1938年)、③瀧口差出、マン・レイ宛2通(1936年頃、1966年)を発表した。これらは日欧シュルレアリストの交流を証すと同時に、戦中をはさみ複雑化した日本のシュルレアリスムの実相を解く鍵となる。さらに④晩年のマン・レイと宮脇愛子の交流に注目し、1960年代、平面から立体へと展開した宮脇の創作を再検証した。 2)ミロと日本研究:研究分担者(松田)は、「ミロ 日本を夢見て」展(2022年度巡回)における研究により、第17回西洋美術振興財団学術賞を受賞(主催:公益財団法人西洋美術振興財団)。「『ミロと日本』を全体テーマとして画期的な内容と新知見を基盤にしての秀逸な展覧会」で、「同展とその図録は積年にわたる資料調査や発掘、地道な研究があってこそ実現をみた成果であり」、「内外のミロ研究への貢献も高く、顕彰に十分に値するもの」と評された。 3)瀧口研究会の活動:研究分担者(笠井、松田、朝吹)は所属機関(慶應義塾大学)の機関誌への寄稿や瀧口研究会でシンポジウムを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響により、予定を変更し国内研究を進めた。遅延の主な事由は、海外渡航費の高騰が重なり、本活動が基本としてきた国外の各諸機関での実地調査が困難になったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の計画を繰越し延長し、具体的に次のような推進方策を検討している。 1)作業が遅延していたミロ・瀧口書簡集の編集作業を再開する。 2)瀧口旧蔵資料の調査:朝木は瀧口と交流があった関係者への取材、所蔵資料を調査する。既に巖谷國士氏、宮脇愛子アトリエでの調査を始めている。 3)日本とスペインにおける版画の交流の研究:松田は「スペインのイメージ」展(国立西洋美術館他、2023年度巡回)の為に、両国の版画が互いにどのように流入したのか、その歴史的経緯を研究する。特に1950年代以降のスペイン文化政策の変化や抽象美術の世界的な動向を背景とした瀧口や土方定一、エウダル・セラらの交流、作品の変化を明らかする。
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Causes of Carryover |
延長:2023年3月13日 次年度使用計画:書簡集の編集作業費、著作権使用料に使う。可能であれば海外調査渡航費にあてる。
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