2021 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking of an idea of "Chamber music" in 19th century: Focusing on the practice and discourse of the New German School
Project/Area Number |
19K00148
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
朝山 奈津子 弘前大学, 教育学部, 講師 (30535505)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 音楽史記述 / 楽派概念 / 新ドイツ派 / フランツ・ブレンデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には、全ドイツ音楽家協会 Allgemeine Deutsche Musiker Verein の年次集会である「音楽家大会 Tonkuenstler Versammlung」で行われた演奏会のデータベース化を引き続き進めた。今年度上半期中にデータベースを完成させ、ジャンル、作曲家、編成などの統計を容易に割り出すことができるツールとして一般公開を目指す。 さらに、新ドイツ派の提唱者であるF. ブレンデル(1811-1868)が、そもそも「新ドイツ派」を命名するに至った経緯について研究を行った。ブレンデルが主筆を務めた『音楽新報Neue Zeitschrift fuer Musik』、また当時の音楽批評の領域で論陣を張った『境界 Grenzboten』誌などの音楽雑誌において、いわゆる「新ドイツ派」の音楽家がどのように呼ばれていたか、また、そもそも「派 Schule」および「新ドイツ neudeutsch」なる語がそれぞれどのようなコンテクストを持つのかを調査した。その上で、ブレンデルの著作『イタリア・ドイツ・フランスの音楽の歴史 Geschichte der Musik in Italien, Deutschland und Frankreich』(1852初版、1867第4版)における「楽派」の用法と照らし合わせ、「新ドイツ派」に含まれる「派」の語が音楽史と批評の両方の背景を持つことを明らかにし、全国規模の研究集会で報告したのち、論文にまとめた。本研究は、「新ドイツ派」の成立に関わる根源的な問いに答えるだけでなく、音楽史記述における「楽派」の概念史の一画をなす成果として重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍による渡航制限や、検疫に伴う隔離措置などに鑑み、当初予定していた在外研究の部分には着手できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度中にコロナ禍による渡航制限が緩和されれば、予定していた資料収集のための調査旅行を実施するが、実現できない場合を念頭に、研究対象とテーマを拡張し、同時に滞在型の資料収集から、複写依頼を中心とする調査への変換を進め、あるいは国際的な研究集会での発表が採択された場合にはその参加費用に充てるなど、夏期までに研究計画の見直しを行う。
|
Causes of Carryover |
当初、ドイツにおける資料収集のための旅行と滞在費用として計上していた40万円を執行できなかったため。コロナ禍での渡航制限が続く場合には、滞在型の包括的調査から、複写依頼による重点的な資料収集への転換を進める。
|
Research Products
(3 results)