2019 Fiscal Year Research-status Report
Art of Footprints: Aesthetics of Disappearance and Imperfection of Richard Long's Walk-Works
Project/Area Number |
19K00149
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山口 惠里子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20292493)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リチャード・ロング / 歩行 / ダートムア / 場所としての彫刻 / 日本 / 「あいだ」の場所 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチャード・ロングが1970年代からイギリスのダートムアで制作した作品(彫刻、テクストワーク、地図作品)において自身の歩行を作品化するなかで彫刻概念を再構築し、歩行中に出会った「場所」としての彫刻を生み出した過程を明らかにした。その「場所」で作られる彫刻は、まもなく消散するものである。ロングはそのような彫刻で、自身の歩行の痕跡を束の間留めようとするのである。ロングは1970年代に、アイルランド、カナダ、オーストラリア、日本において、100マイルの歩行に基づく作品を制作した。ロングの歩行は、ある場所の経験から、世界の地表へと連続するものになっていく。その地表の一つとして、ロングは日本を選んでいる。本研究では、ロングにとって、ダートムアと日本での歩行がいかにロングがいうような「補完的」なものになったのかについて問い、さらにそのような場所と場所の間に生起する関係性について考察した。 この研究を進めるにあたり、2019年8月7日~8月21日にイギリスにて調査研究を行った。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、ナショナル・アート・ライブラリーにてロング関係の資料調査を行い、リヴァプールのテイト美術館、セント・アイヴズのテイト美術館、ロンドンのテイト・モダンでは、ロングと同時代の美術作品との比較研究を行った。またダートムアでは、ロングが歩行したルートを調査した。 以上の調査研究に基づく考察を、"In-Between Places: Richard Long’s Walk-Works on Dartmoor and in Japan"と題した論文にまとめ、関西大学において2020年2月14日~17日に開催された国際シンポジウム"Imperfectionist Aesthetics: Philosophy, Art, Culture"で英語による発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリスにおいてロングの作品に関わる調査研究を実施し、その研究成果を、英文の論文"In-Between Places: Richard Long’s Walk-Works on Dartmoor and in Japan"にまとめ、国際シンポジウムにおいて発表した。本論文は、論文集Imperfectionist Aesthetics(仮題)に収録される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半は新型コロナウィルス対策のため国内外の出張予定を中止し、2019年度に収集した資料の整理、あるいは文献調査に切り替える。ロングは日本各地で多数の作品を制作している。その作品は、制作地の美術館等に収められており、制作の過程についても当該美術館に記録されているので、新型コロナウィルスの収束状況によって日本各地での調査が可能となれば、日本で制作されたロング作品の研究調査に重点をおいて研究を進める。美術館での調査が難しい場合は、美術館関係者とオンラインを用いてのインタビュー調査なども行う。
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Research Products
(1 results)