2020 Fiscal Year Research-status Report
Art of Footprints: Aesthetics of Disappearance and Imperfection of Richard Long's Walk-Works
Project/Area Number |
19K00149
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山口 惠里子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20292493)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リチャード・ロング / 歩行の文化性 / ティム・インゴルド / クリストファー・ティリー / 歩行論 / 美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は国内外においてリチャード・ロングが作品を制作した場所での調査を続行するとともに、イギリスの歩行文化に関する資料の渉猟を行う予定だった。とりわけ、ロングが日本で制作した作品群の調査を重点的に実施し、国際学会における口頭発表をを準備することを計画していた。だが、新型コロナウィルスの感染状況が回復しなかったため、国内外の出張予定を中止せざるを得ず、美術館等に記録されている資料の調査を断念した。 2019年度に収集した資料・文献を整理するとともに、ティム・インゴルドらの歩行論やクリストファー・ティリーらの風景論、および歩行と文化に関する文献を渉猟し、歩行の文化性と現象学的歩行について考察した。さらに、日常の美学(Everyday Aesthetics)に関する研究も追究し、歩行という日常的な行為・運動がもつ美学と、ロング作品の美学との接点について考察した。これら研究を踏まえ、2020年2月の国際シンポジウム"Imperfectionist Aesthetics: Philosophy, Art, Culture"での発表を再考察し、英語論文"In-Between Places: Richard Long’s Walk-Works on Dartmoor and in Japan"を執筆し、英語の論文集の編者に提出した(現在、査読中である)。 また、『ヴィクトリア朝文化事典』(刊行予定)の特大項目として「芸術・デザイン」を執筆し、ロング芸術の「消散」と「不完全性」の美学が形作られる以前のイギリス美術の美学を歴史的にかつ具体的に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染状況の改善がみられなかったため、2020年度に予定していた国内外における実施調査と資料収集を断念せざるを得なかった。歩行論に関する文献研究については進めることができたが、リチャード・ロング研究の一次資料はイギリスの図書館・美術館に所蔵されているため、歩行論研究とロングの作品研究とを接続させることは困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの状況にもよるが、海外での調査研究が可能となれば、イギリスの美術館・図書館においてリチャード・ロングの芸術に関する一次資料を研究するとともに、国内外の美術館が所蔵するロングの作品を実見し、研究を推進する。一方で、歩行論研究、芸術の完全性をめぐる研究、ロングの芸術と共鳴するA・ゴールズワージイらの芸術研究に関する文献を渉猟し、文献調査を実施する。 新型コロナウィルスの収束状況と研究の進捗状況によっては、研究計画の延長も考慮に入れる。
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Causes of Carryover |
関連する国内外に所在する資料調査と国際学会での研究発表に経費を使用する予定だったが、新型コロナウィルスの影響で渡英が不可能となったため残額が生じた。2021年度は、2020年度の残額と2021年度交付予定の助成金を、関連文献や資料の購入と国内の美術館等の諸機関における調査費用に充てる。また、渡英が可能になれば、渡航費用に助成金を使用する。オンラインでの資料収集・データ管理、および学会発表、国際会議等に備えてコンピュータを購入する。
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