2020 Fiscal Year Research-status Report
庭園における観察者の身体とオブジェクト群の空間的パターン動態の分析
Project/Area Number |
19K00152
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
山内 朋樹 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (10769318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 庭園 / 石組 / 景石 / 身体 / フィールドワーク / パターン / 作庭 / 現場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、庭園内の石や樹木、地形などの配置が、相互にどのような造形的関係を持っているのか、またそれらの物体群が庭園を訪れる観察者、または作庭者自身の身体とどのような関係を持っているのかを理解することにある。研究計画では以下の通り相互に密接に連関する三つのパートから研究を構成している。1. 庭園内の物体群を造形要素に分解してマッピングし、2. 身体-物体関係のパターンを抽出し、3. このパターンを作庭時の図面や作庭理論等と突き合わせて検証する。 二年目にあたる令和二年度は四月から五月にかけて行われた京都府内の作庭現場を取材し、1から3の項目を総合的に進めることができた。すでにできあがっている庭園とは異なり、作庭現場では庭師たちが実際に石や樹木をどう配置し、物体と身体とのあいだにどのような関係をつくりだしていくのかをつぶさに観察することができる。フィールドワークでは、スケッチ、メモ、写真、動画などを用いてひとつの石を置くごとに詳細な記録をとり、造形的な意図についても逐一インタビューをおこなうことで、どのようにして庭に特定の造形的パターンが現れてくるのかについて明らかにすることができた。 これらの資料は詳細な分析ともにフィールドノートにまとめて書き起こし、いくつかの研究会発表での基礎資料となったほか、準備中の著作のなかで公開される予定である。 また三年目の研究に向けて当該現場の詳細な実測図を作成するための事前調整等を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目と同様、国内庭園のフィールドワークは感染症の影響もあり十分とまでは言えないまでも、研究推進に必要な分量は最低限消化することができている。しかしながら海外庭園のフィールドワークについては未だ延期を余儀なくされている。 本研究では海外調査も重要な位置を占めているため二年目の春時点での方針転換は決定しなかったものの、渡航についての目処が立たない状況だったため、二年目は国内庭園のフィールドワークのみで研究内容を消化する可能性も視野に入れてとり組んだ。今年度も渡航の目処が立たない場合、国内のフィールドワークを十分にこなして研究内容の消化に努めるが、補助事業期間の延長をおこなうかどうかについても適切な時期に判断したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目は本研究を広い歴史的コンテクストに置き直すことを目指す。引き続き国内を中心にフィールドワークをおこない、これまでのフィールドワークで理解してきた理論をまとめていく。また一年目、二年目の研究によって庭園を造形的に理解する目処が立ったが、こうした見方をあらためて『作庭記』を中心とする伝統的な庭園理論と突きあわせていきたい。理論との折衝をとおして庭園史研究の争点を引き受けながら、庭園の見方を批判的に拡張したい。 また、今年度は二年目のフィールドワークの対象となった庭園の実測図の制作、またその庭園についての著作の準備を大きな課題としている。記述、スケッチ、写真、インタビューの他に、実測図をとおしてより詳細な造形分析が可能となるだろうし、準備中の著作を通じて広く研究成果を公開したい。
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Causes of Carryover |
第一に昨年度まで海外渡航ができなかったため、最終年度での渡航の可能性を考慮しているため。第二に今年度は昨年度にフィールドワーク対象地となった庭園の実測図の作成を実施するため。こちらは専門業者に発注するのでそれなりの予算を組む必要があると考えている。
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