2020 Fiscal Year Research-status Report
アビ・ヴァールブルクの社会的記憶のイメージ論と最晩年のジョルダーノ・ブルーノ研究
Project/Area Number |
19K00156
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 源太 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50647477)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アビ・ヴァールブルク / ジョルダーノ・ブルーノ / 想像力論 / 占星術図像 / 宇宙論 / 宗教論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当研究計画の二年目にあたり、計画通り、ヴァールブルク文化科学の二大テーマ系「情念定型」と「占星術図像」のうち後者に焦点を当てて、研究を進めた。ヴァールブルクのブルーノ研究はまずは占星術図像研究から発しており、ヴァールブルクが最初に集中的に読解したブルーノの著作は、天空の星座の改革という筋立てで倫理学を語る『傲れる野獣の追放』であった。発表「ルネサンスの宗教論と多様性の問題――ピーコ・デッラ・ミランドラからジョルダーノ・ブルーノまで」(日本倫理学会第71回大会、オンライン、2020年10月3日)では、そのブルーノ『傲れる野獣の追放』をルネサンスの宗教論のなかに位置づけなおして読解することで、ヴァールブルクへの影響作用を理解するための基礎を固めることができた。また論文「ジョン・トーランドによる汎神論の発明――ジョルダーノ・ブルーノの哲学の継承」(『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』第51号、2021年、1-14頁)では、ブルーノの宗教論が宇宙論と結びつきながらいかに後世に影響作用を与えたのかを、トーランドとスピノザとの対決のなかに探った。さらに、ブルーノ『しるしのしるし』(第一部第三五~五〇節)の翻訳を上梓し(『多様体』第3号、2020年、123-141頁)、ブルーノの占星術論・呪術論の基本的理解を得た。昨年度の実施状況報告書にも記載の通り、ブルーノ哲学には中世ヨーロッパの政治神学とは異なる、政治呪術とも言えそうな構想があり、ヴァールブルク晩年の『ムネモシュネ・アトラス』の基本思想ときわめて親和的なものと思われ、『しるしのしるし』のなかにもそれを確かめることができた。なお本年度は、ヴァールブルクが占星術図像研究からブルーノにアプローチしていた際に重要な発見をした南イタリアの調査を、あわせて計画していたが、新型コロナ・ウイルス感染症の流行により延期を余儀なくされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ・ウイルス感染症の流行により、予定していた海外調査をおこなうことができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にもとづいて、次はブルーノ『英雄的狂気』とヴァールブルクの「情念定型」論の検討を始めるとともに、コロナ禍によって研究の遅れた点を、より理論的考察に比重を移すことでおぎなう予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ・ウイルス感染症の流行により、計画していた海外調査ができなかったため。次年度に海外調査が可能になればそれに使用するが、引き続きできないようであれば、研究資料の購入や、海外研究者とのオンラインでの意見交換・共同研究会などに使用する。
|
Research Products
(3 results)