2023 Fiscal Year Annual Research Report
英語圏における日本アニメ作品研究とその批評的主題の再考察
Project/Area Number |
19K00161
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉本 光宏 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80596833)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アニメ / ポストモダニズム / サブカルチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
英語圏におけるアニメ研究の歴史と現状、支配的な批評パラダイムの再検討を行うというのが本研究の主な目的である。関連資料の収集や分析、論点や争点の整理、研究ノートの作成など、最終的に出版予定の英文研究書を執筆し完成させるために必要な作業はほぼ終了した。今後大学出版局に計画書を提出し査読者によるレビューなどが控えているので、詳細を具体的に語ることは控えたいが、主に三つの視点から英語圏アニメ研究を批判的に検討し、日本と英語圏(いわゆる「グローバル」な言説空間)という区別を超えた、新たなアニメ研究の必要性を論じていく。第一に、「アニメ」概念の徹底的な再検討。日本でも英語圏でも「アニメ」をどう定義し理解すべきかについて、さまざまな提案や議論が行われてきたが、本研究ではそれらを整理した上で、理論と歴史の両側面からこれまでにない大胆な再定義を提示する。第二に、「ポストモダン」概念の本格的な見直し作業を通じて、アニメの歴史性を詳らかにしていく。英語圏のアニメ研究は「ポストモダン」や「ポストモダニズム」という言葉を安易に使用し、言葉遊びの域を出ない論文などが書かれる傾向が強いため、概念そのものに対する拒絶反応を引き起こすことも珍しくない。本研究では表層的な皮相さに回収できないポストモダン概念の重要性を確認し、アニメの歴史性を明らかにする。第三に、「サブカルチャー」概念の徹底的な再検討を通じて、アニメとは何かを論じる。英語圏のアニメ研究には、問題としての「サブカルチャー」や「ポピュラーカルチャー」に対して関心が根本的に欠如している。日本の活発な批評や論争は参考になるが、理論的な裏付けが弱いと言わざるを得ない。これらの現状を整理した上で、サブカルチャーとアニメの再文節化を試みる。研究期間終了時点で原稿全体の七割を書き終えた。今後一年間で残りを完成させ出版することを見込んでいる。
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