2019 Fiscal Year Research-status Report
日本のアニメーションおよび「アニメ」に関する理論的言説についての歴史的研究
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19K00163
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石岡 良治 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90399121)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アニメ / アニメーション / 身体 / ジェンダー / ジャンル論 / コンピュータグラフィック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる2019年度の研究実績は、次の観点から日本の「アニメ」に関する理論的言説の調査についての様々な条件を解明したことにある。 まず第一に、日本の「アニメ」にみられる身体表現の特質と変遷について、広くアニメーション史や実写映画の歴史を参照しつつ解明した。マンガに由来する「平面表現」の特質が身体表象に現れることが多い日本のアニメは、しばしば「二次元性」によって説明されてきたが、近年の重要な転換点としての3DCG表現の受容に注目することで、近年の実写映画およびディズニーやピクサーアニメーションと現代アニメが用いる身体表現の、共通点と差異を明らかにした。また、2010年代のアニメ表現が、これまでのアニメおよび「オタク」をめぐる言説における男性観客の自明視を大きく覆している傾向性に注目することで、ジェンダー研究を参照する必要性を確認した。 第二に、大英博物館で開催された展覧会「The Citi Exhibition Manga」を訪問するとともに、英語圏における日本の「マンガ」や「アニメ」についての言説が、日本語で展開されている言説とはやや異なる強調点をもつことを解明した。とりわけ1988年の大友克洋監督『AKIRA』にはじまるSFアニメの系譜が、英語圏では実写映画に近いタイプの受容をされている事実は、広範なアニメーション表現における日本のアニメの大きな特徴となるものであり、映画研究におけるジャンル論を参照しつつ、文化圏ごとに異なる姿をみせる「アニメ」言説を掘り下げていく必要性が明らかになった。 また、アニメ表現をめぐるワークショップを開催することで、アニメ制作者の実践を具体的に学びつつ、研究者と意見交換を行う場とすることで、現代のアニメに関する理論的言説を構想していく手がかりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を学会発表、書籍における論考の寄稿、そして著作の刊行という形で出すことができた。これは当初の計画で考えられていたよりも高い水準での達成となったが、ジェンダー研究の参照など新たな理論的研究課題も生じた。総体としてはおおむね順調に研究が推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており、予定通り、研究計画を進める。 2020年度は前年度の成果と課題を引き継ぎつつ、理論的研究調査とワークショップを推進していく予定である。しかしながら新型コロナウィルスをめぐる情勢変化もあり、アニメスタッフへの聞き取りや研究者との意見交換については従来の計画の変更を余儀なくされており、遠隔ワークショップなどの代替手段も随時検討したい。
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[Book] イメージ学の現在2019
Author(s)
坂本 泰宏、田中 純、竹峰 義和
Total Pages
550
Publisher
東京大学出版会
ISBN
9784130101400