2020 Fiscal Year Research-status Report
日本のアニメーションおよび「アニメ」に関する理論的言説についての歴史的研究
Project/Area Number |
19K00163
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石岡 良治 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90399121)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アニメ / アニメーション / 実写映画 / メディアミックス / 映画批評 / ジャンル論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の二年目にあたる2020年度の研究実績は、以下の点について日本の「アニメ」に関する理論的言説の調査を行なったことにある。コロナ禍ということもあり、実地調査やアニメ制作者との交流は困難だったが、そうした状況で明らかになった動向を歴史的に検討する機会となった。 まず第一に、実写映画研究における「アニメーション」の曖昧な位置付けの再検討によって、アニメーションないしは「アニメ」についての従来の言説を整理した上で、境界事例となる作品分析を行った。二例あげると、日本国外で評価が高い今敏のアニメ作品の受容における「実写映画」との相互関係を検討した。また、大林宣彦監督のフィルモグラフィーを検討することで、実験映画やアニメーション・CGなどが駆使され混在している様相を再確認した。 第二に、「アニメ映画」の地位の変動についての分析を行った。テレビ番組を中心に展開されてきた日本の「アニメ」は、映画よりはテレビドラマにより近しいものとみなされてきたが、「アニメ映画」が日本の実写映画興行に占める存在感はかつてなく大きなものとなっており、コロナ禍における映像配信環境の変化も含めて興味深い事態を生じさせている。2020年度に公開され、日本映画の興行収入記録を更新した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、例えば『千と千尋の神隠し』のようなアニメーション映画と比べたとき、TVシリーズの続編であり、長期シリーズの途中のエピソードであるという際立った特性を有している。よって完結した物語を繰り広げる媒体としての「映画」との比較だけでは十分でなく、「アニメ」についての了解もまた、実写映画とNetflixなど配信ドラマの関係などと同様の変化を示すものであり、継続的に注視したいと考えている。 また、ワークショップにおける意見交換によって、アンドレ・バザンのアニメーション批評についての新たな展望を知ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により研究計画の変更を余儀なくされたが、現状をリサーチしつつ研究成果を論考や談話という形で発表することができた。編集作業の遅れもあり、研究成果の発表が遅れている論考もあるが、2021年度に公刊できる見込みである。理論的言説の研究についていくつかの新たな課題が生まれたが、総体としてはおおむね順調に研究が推移している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2021年度は、コロナ禍でやや停滞気味だったワークショップをオンラインにて開き、これまでの知見をまとめる作業を行っていく。鳥取における実地調査は事実上難しくなったので、代替案として、オンライン環境がもたらす理論的課題について、メディア理論のリサーチを進めていく。 またワークショップの成果を書籍としてまとめる準備を行いつつ、これまでの成果の公刊につとめる。アニメについての理論的言説について、これまでの研究を集約したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
鳥取における実地調査がコロナ禍で不可能になったため。代わりにコロナ禍で盛んになった、映像のオンライン配信についてのメディア理論的調査のための文献を購入する予定である。
|