2021 Fiscal Year Annual Research Report
日本のアニメーションおよび「アニメ」に関する理論的言説についての歴史的研究
Project/Area Number |
19K00163
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石岡 良治 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90399121)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アニメーション / アニメ / アダプテーション / ポストモダニティ / 映像文化 / 表象文化論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の三年目すなわち最終年度にあたる2021年度の研究実績は、これまでの調査やワークショップなどの成果をまとめつつ、日本の「アニメ」に関する理論的言説について以下のような展望を得たことにある。なお前年度同様、コロナ禍ということもあり、実地調査やアニメ制作者との交流は困難であったが、zoomなどを用いたオンラインによる調査や交流を行うことで、文献調査を補いつつ知見を深め、日本のアニメーションおよび「アニメ」の位置付けについて検討することができた。 すなわち、これまでの文献調査をまとめることで、「アニメーション」概念そのものが、実写映画と対比される数々の特性をもつ映像実践をグループ化する呼称であり、これまでの歴史的経緯の蓄積によって成立している「言説」としての性格を有することが確認できた。他方日本の「アニメ」は、マンガやゲームなどの「原作」のアダプテーションとしての性質をもつことが多く、テレビ番組をひとつの典型的なモデルとして有する商業作品群とみなされることが多い。また「アニメ」の範囲については日本以外の文化圏においても一定の了解をもちながらも、その一方で時代ごとに「アニメ」の輪郭は変遷を遂げており、今もなお変化を続けていることが理論的言説の点からも確認することができた。 このような認識を得る上で有益だったのが、ワークショップにおける意見交換、とりわけ中国におけるアニメーション史についての知見や、モーショングラフィックスを用いたプロモーション映像におけるアニメーションの使用についての知見を得ることとなった、研究者や制作者との交流である。また本研究を通じて得た知見に基づき、大友克洋の『AKIRA』(アニメ映画は1988年)がマンガとアニメ両面にわたり有する歴史的重要性を、「日本のポストモダニティ」をめぐる言説との関係から考察することで、今後の研究課題を得ることができた。
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