2021 Fiscal Year Research-status Report
1910年代米国と20年代日本におけるマンガ「親爺教育」の美学的研究
Project/Area Number |
19K00165
|
Research Institution | Shokei University |
Principal Investigator |
三浦 知志 尚絅大学, 現代文化学部, 准教授 (20583628)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 米国新聞マンガ / 親爺教育 / アイリッシュ・アメリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は主に、米国の新聞マンガ「親爺教育(Bringing Up Father)」の、1910年代連載分のリストを完成させるとともに、このマンガの表現上の意義についての考察をまとめた。 リスト化の作業は米国議会図書館(Library of Congress)のデジタルアーカイヴ Chronicling America を参照して行い、1910年代に連載されたおよそ2000エピソードをリストにした。1913-14年分については、三浦知志(2020)「「親爺教育」1913-14年の新聞掲載状況に関する報告」『尚絅大学研究紀要』52号、169-209頁に、また1915年分については、三浦知志(2022)「1910年代「親爺教育」の「カトゥーン」スタイルとスラップスティック」『尚絅大学研究紀要』54号、91-123頁に掲載している。1916年以降分も順次公開する。 このリスト化作業を通じて明らかになったのは、「親爺教育」の表現におけるアイルランド人ステレオタイプ的な造形の「漂白」、および1915年頃からのスラップスティック表現の増大であった。キャラクターの性格という点ではアイルランド人労働者のステレオタイプを留めつつも、造形的には19世紀の侮蔑的なアイルランド人の特徴がほとんどなくなり、キャラクターがシンプルかつ洗練された絵柄になったことは、このマンガが国内外で広く受け入れられたことのひとつの理由になったと考えられる。1920年代以降の日本の漫画家が「親爺教育」の絵を模倣したことを考えれば、「親爺教育」の造形的な本質に注目することは「「親爺教育」の日本への影響」を検討するうえで重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、研究のための出張が予定していた時期に叶わず、当初の計画より進捗状況が遅れている。具体的には、「親爺教育」の日本への影響を検討するうえで不可欠な、麻生豊「ノンキナトウサン」の分析に着手できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の理由により、研究期間を1年延長している。麻生豊に関する資料の一部を保管する大分県立歴史博物館とはすでに連絡を取り、今年度内の研究出張を計画中である。戦前の日本マンガ史研究の専門家からも知見を伺い、論考をまとめたい。
|
Causes of Carryover |
当該年度に予定していた出張等を中止せざるを得なかったため、この間支出がなかった。次年度使用額は1年延長した研究期間に充てる。
|