2020 Fiscal Year Research-status Report
The body of Buddha and Representation - Investigating the Foundation of Japanese Religious Art History
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19K00168
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東大寺大仏 / 空海 / 法身舎利 / 奝然 / 清凉寺釈迦如来像 / 法成寺 / 生身仏 / 五輪塔 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り「仏身論」がいかに表象されているかについて、①伽藍・堂宇、②仏教造像、③神表現の三項目において調査・分析をおこなった。その結果、本研究全体を貫く見通しを獲得した。具体的には以下の諸点をあきらかにした。 (a)日本において最初に法身仏として具現化された東大寺大仏は、平安時代初期の空海による真言院建立以降、密教的意味を重ね、顕密を融合した法身仏と見なされるに至る。(b)空海将来の舎利八十粒は、後七日御修法に際して金銅宝塔に納められることにより、法身大日に見立てられ修法の本尊となった。(c)清凉寺釈迦如来像は、施主である東大寺僧奝然の仏身論を反映し、舎利である五臓が顕密融合の法身に見立てられ、それを蔵することで仏像は生身仏という意味を獲得した。法身舎利の納入が仏像を生身化するという二身論に基づく仕組みがこれにより成立した。(d)法成寺は藤原道長の東大寺での受戒を契機に東大寺に倣い造られた。それにより法成寺金堂本尊は大仏同様、顕密融合の法身仏とされ、各堂宇はこの像を基点とした仏身論の枠組みによって意味づけられた。以後この原理は法勝寺・中尊寺にも継承された。(e)堂宇間の関係を仏身論によって繋ぐ構想は、北宋開封の大相国寺・啓聖禅院にも見られるが、彼が華厳経に基づくのに対し平安時代以降の日本は顕密を融合しているところに大きな特色がある。(f)再興東大寺大仏は、五輪塔に納められることで法身となった舎利が納入された結果生身仏となった。五輪塔に舎利を納める所作は顕密融合の法身を生む仕組みである。(g)再興東大寺大仏は生身仏となった結果応身釈迦と同体視されるに至り、大仏殿で催された顕教法会(最勝講経)の主尊となった。一方、並行して大仏殿で修された密教修法(両部大法)は大仏胎内の法身である五輪塔内の舎利八十粒を本尊とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要において述べたとおり、今年度は研究全体を貫く見通しを獲得することができた。これにより、平安時代中期(10世紀)から鎌倉時代初期(13世紀)までの仏教造形を「仏身論」に基づいて統合的に語ることが可能となった。この見通しに基づき、2020年度は、各時代の造形について、10世紀についての「清凉寺釈迦如来像の胎内に見る信仰世界」(業績3番)、10世紀から12世紀についての「草創期中尊寺伽藍の構想と信仰」(業績2番)という成果を発表した。さらに、業績3番の内容を補填する「清凉寺「版画弥勒菩薩像」と奝然の弥勒信仰」(業績6番)を発表した。また、仏像と安置場所の関係を仏身論の観点から分析した「仏像のアーケオロジー―仏像から「文化の痕跡」を読み取る」(業績4番)も発表した。現在は、次項目にあげる三つの論考を執筆中である。これら一連の論考が完成すると、8世紀から13世紀までの仏教造形を「仏身論」を基軸に再構成することが可能になる。以上から、本研究は当初の計画以上に進展していると見なされる。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたとおり、2020年度は、本研究全体を貫く見通し、すなわち「仏身論」を基軸にして仏教造形を語る方法論を獲得した。これは「生身」-「法身」という二身論を分析の基点に置くことであり、より具体的には舎利を「法身」とするための仕組みである五輪塔に着目することである。そのため、現在は、「法身」としての舎利に着目した、「法身としての舎利と容れ物―仁寿舎利塔から大仏へ」を執筆中である。さらに、五輪塔を納入した鎌倉時代(13世紀)の仏像についての「生身仏像と法身舎利」、13世紀の叡尊の造像に着目した「受戒と仏像」も準備している。以上の進行中の研究は、2021年度中に成果を刊行する予定である。これらの一連の論考が完成すると、8世紀から13世紀までの仏教造形を「仏身論」を基軸に再構成することが可能になると見込まれる。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウィルスの国際的な流行により、国内での出張が制限され、現地調査が計画どおり進められなかった。2021年度は、新型コロナウィルスの流行状況を見ながら、現地調査にあたる計画なので、繰り越した資金はそのために使用する予定である。
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Research Products
(6 results)